「下町ロケット」ではないが、宇宙は人に夢を与えるらしい。
中小企業数が多く、地場の技術力が高いとされる福井県が、自治体としては初めて人工衛星を打ち上げた。カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から現地時間3月22日、「福井県民衛星すいせん」を搭載したロシアのソユーズ2ロケットが発射。ロケットには18カ国38基の衛星を搭載。主衛星は韓国で他国は相乗り。
「すいせん」は福井県と県内企業らが共同開発した超小型衛星。大きさは60×60×80センチ、重さは約100キロ。「すいせん」は福井県の県花だ。
なぜ県民衛星なのかといえば、県が主導し、県民のために利用され、県が資金を補助したから。担当である県産業労働部産業技術課主任の牧野一郎さんに話を聞いた。
「2015年に福井経済新戦略で地元企業から超小型衛星開発の提案があり、翌16年、福井県民衛星技術研究組合が設立されました」
組合は衛星製造と衛星データ利用の2グループに分かれた県内企業9社と、福井県を含む12の団体で構成。東京大学の中須賀真一教授の下で、県内企業は技術を取得していき、今回の打ち上げに至った。6年越しの計画である。コロナ禍でカザフスタンへの渡航ビザが取得できなかったため、打ち上げは日本で見守ったそうだ。
「すいせん」は宇宙から望遠カメラで地球を撮影。同一地点の撮影頻度は約2週間に一度。画像データは、穀物の生育状況の監視、森林の管理、河川の中州のしゅんせつなどに役立てる予定だ。
「衛星データは、まずはモデルユーザーである福井県が利用し、将来的には国内市場での活用を目指します。組合では衛星画像利用システムも開発しました」
5年間の運用予定だが、県はいくら資金を提供したのか。
「企業も費用を出していますが、県は製造費用や施設整備で10億円を補助しています」
別途かかる画像データ利用料については開発元のアクセルスペース社と秘密保持契約があるため非公開。アクセル社が16年に発表した計画では50機の衛星を飛ばし、毎日地球を撮影する予定だ。
一方、技術を取得した福井県の企業は実は「すいせん」以前にも3機の衛星を宇宙に放出済み。ルワンダ共和国向け衛星、東大用の衛星、東京2020組織委がスポンサーとなった「ガンダム衛星」だ。
このガンダムとシャア・ザクのフィギュアを搭載した衛星は昨年4月に国際宇宙ステーションから宇宙空間に放出されているが、東京五輪は延期に。今夏「連邦の白い悪魔」を目撃することはできるか。