東京上回る感染拡大、県が方針一転「まん延防止」要請…市民「もっと早くても」

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて1日、政府に「まん延防止等重点措置」の適用を要請した福岡県。これまで重点措置には慎重だった同県が方針を一転させた背景には、福岡市や久留米市での人口10万人あたりの新規感染者が、東京都など緊急事態宣言の発令地域を上回るという厳しい現状があった。5連休の初日とも重なり、市民らには戸惑いも広がった。
服部誠太郎知事は県庁で臨時の記者会見を開き、「(独自の)要請措置の効果が十分に表れてきているとは言いがたい」と強調した。
県内では4月中旬以降に感染者が急増。県は県民に不要不急の外出自粛を求めているほか、4月22日からは福岡市の飲食店などに午後9時までの時短営業を要請した。同25日には県南部の久留米市にも対象を拡大。これらを踏まえ、県は重点措置の適用要請について「時短の効果をみたい」として慎重な姿勢を示してきた。
だが、感染状況は改善しなかった。5月1日の新規感染者は352人で、4日連続の300人超え。直近1週間の新規感染者(人口10万人あたり)でみると、特に感染状況が悪化している久留米市は、緊急事態宣言が発令されている東京都の約2・8倍、大阪府の約1・2倍で、福岡市も東京都の約1・5倍だった。県全体の病床使用率は4月29日時点で52・0%で、医療体制のさらなる

逼迫
( ひっぱく ) も懸念される。
一方、宣言の発令要請について、服部知事は「県内全域が対象になる。地域ごとの感染状況の差が大きいので、重点措置で地域を特定した対策を取ることが効果的だと思う」と述べ、否定的な見解を示した。
県によると、重点措置の適用を西村経済再生相に電話で伝えた際、西村氏からは「機動的に対処する」と前向きな返答があったという。
5連休の初日に発表された政府への重点措置の適用要請について、市民からは戸惑いの声が聞かれた。
夫婦で福岡市・天神に買い物に訪れた同市南区の女性会社員(45)は、「連休に入ってすでに人が移動しているのに、『なぜ今なのか』と感じる。もっと早くても良かったのではないか」と強調。同市中央区の居酒屋「とりのてつ大名店」のオーナーの男性(35)は「これから重点措置が適用されたとして、効果があるのか疑問だ。この1年、行政は同じことを繰り返しているだけのような感じがする」と漏らした。

服部知事は1日、県内で11、12日に予定されている東京五輪の聖火リレーについて、福岡市と久留米市での公道での実施は困難との考えを示した。