これまでにない速さで感染が再拡大している新型コロナウイルス。大阪府は7日、「医療非常事態宣言」を出して医療機関に病床の確保を緊急要請した。府は重症患者が確保病床数を超える可能性が高いとみて危機感を募らせるが、医療機関にも余力はない。変異株の拡大も迫る中、重症患者を受け入れている近畿大病院(大阪狭山市)の東田有智(とうだ・ゆうぢ)病院長(67)は「通常の医療も止められない中で、我々も最大限努力している。感染拡大防止に力を尽くしてほしい」と訴えた。
同病院は2020年春にコロナ病床10床を設置し、同年12月には12床に増やした。2回目の緊急事態宣言解除後の21年3月初め、府の方針を受け10床に戻したが、感染再拡大により、同月末に再び2床増床の要請があった。「新人職員が入ってくる年度初めに、直ちには応じられない。こうならぬよう、平時にこそ感染者増への対策を打っておくべきだったのに……」
3月初めには重症患者は2人だったが、わずか1週間で満床(10人)になった。「増え方の速さは、感染力の強さを示しているのではないか」。変異株の拡大を実感した。重症度も以前とは異なる。「前は人工呼吸器をつないでも2週間ほどで改善し、外すことができた。しかし今は一度つけると、なかなか外せるまで回復できない。変異株に重症化しやすい可能性があることは否定できない」と話す。
現在は、約40人の看護師が24時間体制で対応しているが、「2床増やせば、追加で10人弱の看護師が必要」という。なんとか要請に応えようと検討し始めた直後の4月7日、医療非常事態宣言が出された。
府は6日時点で重症用224床、軽症中等症用1766床の確保を見込む。非常事態宣言に伴い、さらに重症用約100床(軽症中等症からの転用約30床含む)、軽症中等症約350床の追加確保を医療機関に要請した。近大病院にもさらに3床の確保が要請されたが「救急患者の受け入れなど通常医療に影響が出かねない」と頭を抱える。
そこで準備を進めているのが、変異株を検出する簡易キットの導入だ。変異株の広がりや感染力には不明な点が多く、同病院では患者を個室に分けて慎重に対応している。自力で変異株を検査できれば、一つの病室で複数の患者に対応できる。「キットの感度の問題はあるが、迅速に判別することで効率的に病室が運用できる」と話す。
医療崩壊を防ぐには、まずは感染拡大を食い止めるしかない。5日から始まったまん延防止等重点措置に期待したいが、危惧の念は強い。「飲食店でのアクリル板設置などが徹底されたのは良いが、その大きさなどを具体的に示さないと混乱するのではないか。『マスク会食』も言葉だけが広まっている感がある。ハンカチで口を押さえながら話すなどでも飛沫(ひまつ)は抑えられる」。府民の行動変容からコロナの猛威が収まることを、強く願っている。【高野聡】