サルの受精卵に人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を加え、受精後19日目まで培養することに成功したと、米中の研究チームが16日、米科学誌セルで発表した。人とサルの細胞が混在する「キメラ胚」を長期間成長させたのは初めてという。人間の尊厳を巡って議論が起こる可能性がある。
実験したのは、米ソーク研究所や中国昆明理工大などのチーム。受精後6日目の胚盤胞と呼ばれる段階になったサルの受精卵に、人のiPS細胞を加え、キメラ胚132個を作製した。胚は13日目まで約半数が生存したが、その後急速に死滅し、19日目では3個に減った。
チームは、研究の目的として、将来移植用の臓器などを動物で作らせるための基礎研究を挙げている。これまで、ブタやネズミと人の細胞を使ったキメラ胚の作製研究が行われている。今回の実験は、米中両国で倫理委員会の承認などを得たうえで行ったとしている。作製したキメラ胚は、子宮には移植していない。
人とサルのキメラ胚が作製されたことに、日本の研究者からは、生命倫理の面で懸念の声が上がっている。
日本でも、移植用臓器の確保を目的に、人とブタなどのキメラ胚の作製研究が行われている。しかし、長嶋比呂志・明治大専任教授(発生工学)は「人に近く、倫理面などで問題が大きいサルを使うのは禁じ手ではないか」と疑問を呈する。
中内
啓光
( ひろみつ ) ・東京大特任教授(幹細胞生物学)も「動物同士を使った研究を経るなど段階的に行うべきだ。生命科学研究に逆風が吹かないか心配だ」と語る。
人とサルのキメラ胚を作製する基礎研究は文部科学省の指針で容認されているが、沢井努・京都大特定助教(生命倫理学)は「どういう基準で認められるのか不明確で、議論自体が足りていない」と指摘する。