65歳以上の高齢者向け新型コロナウイルスのワクチン接種が段階的に始まったが、接種券の発送を巡り、岩手県内の市町村が混乱している。厚生労働省が当初示した「3月中旬までに準備を」というめどに合わせ、接種の日時や場所が決まらないまま接種券を発送した自治体が多く、受け取った高齢者から問い合わせが相次ぐ事態になった。担当者らは「日時や会場が決まった後で再発送する必要があり二度手間になる」と疲弊している。【山田豊】
市町村は原則、厚労省からの通知文書に基づいてワクチン接種の計画を立てる。2月16日付の文書では、接種券の印刷などの期日を3月中旬までとし、できるだけ早い準備を求めていた。通知を受け、県内の多くの自治体が印刷業者などに依頼。複数の自治体が3月中か4月初旬には発送を始めた。
毎日新聞が県内全33市町村に接種券について取材したところ、盛岡市や奥州市など12市町が接種券の送付と同時に接種日時や会場の案内を同封できていなかった。奥州市の小沢昌記市長は「接種券は会場と日程が決まってから発送した方がいいのではと県を通じて国に要望したが、ワクチン配布の見通しが立たないので、まずは接種券の送付を急いでほしいと国から連絡があった」と当時のいきさつを明かす。
各地の混乱を受け、厚労省は3月12日付の文書で準備時期を「4月中旬まで」に変更し、予約時の混乱を回避するため段階的な発送を求めた。厚労省は変更について「接種券だけが届くと、自治体への問い合わせが殺到する。ワクチン供給や自治体の準備状況を見て改訂した」と説明。ただ北上市の担当者は「途中で通知内容が変更されても業者に依頼して封入作業も終えていたので、結局は日時などを知らせる案内を別に発送することになった」と話す。
3月末から送付を始めた盛岡市には、今月21日までに約1万6000件の問い合わせが寄せられ、重複回答を含めて予約に関するものが約1万4000件、接種会場に関するものが約2000件にのぼった。
国から届くワクチン量や時期の見通しが立たず、医療機関との調整や対象人数の多さも影響して日時などの決定が難航している。担当者は「ワクチンが一定量は届かなければ会場や日時を示すことは難しい。一度に発送できればよかった」と話す。
12市町は日時や場所が決まり次第、はがきや封書、臨時の広報などで改めて通知するとしている。再発送の費用は少なくとも計2100万円以上かかる見込みで、国の補助金を活用する。