サウナ持ち込みの大阪・池田市長が辞職表明「心よりおわび」

市役所に家庭用サウナを持ち込むなどの問題が明らかになった大阪府池田市の冨田裕樹市長(44)が26日、辞職する意向を表明した。「一連の騒動を起こした責任とけじめをとる」と述べた。辞職の時期は「高齢者への新型コロナウイルスのワクチン接種にめどがたった時点」とした。27日の臨時市議会で不信任決議案が審議される見通し。可決されれば、市長は10日以内に議会を解散しない限り失職する。
記者会見の冒頭、冨田市長は「心よりおわびする」と陳謝。そのうえで、新型コロナウイルスへの対応を理由に不信任決議案を採決しないよう市議会に要請。一方で、可決された場合は「しがらみだらけの政治を刷新しなければ未来はない」などと解散もにおわせた。
今回の問題は2020年10月に報道で発覚し、市議会が地方自治法に基づく調査特別委員会(百条委)を設置。百条委は市長控室にサウナや運動器具などを持ち込んでいたことや、職員への叱責や威圧的な振る舞いなどパワハラ行為も認定。21年4月にまとめた報告案で「市長としての資質に著しく欠ける」として不信任決議が相当と結論付けていた。
冨田市長は19年4月に大阪維新の会公認で初当選し、現在1期目。問題発覚後の20年11月に大阪維新の会を離党した。
大阪維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)は「離党したとはいえ、公認候補として応援したのは事実。池田市民におわびしたい。公私混同やパワハラの問題を指摘され、自らの意思で辞職する。政治家本人が決めることだ」と述べた。【三角真理、矢追健介】
百条委調査で疑惑が続々…
一連の問題が発覚したのは2020年10月。冨田裕樹市長が市役所3階の市長控室に家庭用サウナや自転車型健康器具などを持ち込み、使用していたことがニュースサイトで動画と共に報じられた。冨田市長は記者会見を開いて「体調管理のためだった。法的に問題はないとはいえ、市民感覚を失っており猛省している」と陳謝。しかし、市議会は同11月、地方自治法に基づく調査特別委員会(百条委)を設置し、追及に乗り出した。
21年4月までに委員会は11回開かれ、冨田市長のほか、副市長ら市幹部、職員らを証人喚問。その結果、庁舎の不適切な使用だけでなく、職員へのパワーハラスメント、市長専用の市役所駐車券を支援者が使っていたことなど「私物化」の疑惑が次々と浮上した。
4月にまとまった百条委の報告書案では、サウナ設置について「大学でアメリカンフットボール選手をしていた時代からのスポーツ障害の症状緩和のため」という冨田市長の主張に対し、具体的な通院履歴も治療実態も示していないと指摘した。
報告書案によると、控室などにはサウナだけでなく、施術用ベッド、畳ベッド、カセットコンロ、電子レンジ、パックご飯などもあった。冨田市長が20年9~10月の17日間、市役所に泊まっていたことが判明。市長は「公務があった」と弁明したが、「当時の公務の量は寝泊まりしなければならないほどではなかった。公私混同で不適切な庁舎使用」と判断した。
さらに、市長に貸与される市役所駐車場の専用駐車券を、冨田市長の支援者らが計46回利用していた。金額に換算して6万円以上で、報告書案は「公職選挙法で禁じられている寄付行為、利益供与にあたる可能性もある」と指摘。追及を受けた冨田市長は駐車券の保管場所について「机の中かどこか」と述べたが、実際には外部の市長個人事務所にあり、支援者らが自由に使える状態にあった。
冨田市長による職員へのパワハラ疑惑は、百条委による職員への聞き取りなどで浮かんだ。「お前のその態度は何や、民間やったらクビや」などと怒鳴ったり、使用済みのぬれたタオルなどを洗濯させたりしたとされる。冨田市長は大半について「やっていない」と否定したものの、百条委はパワハラ行為を認定。問題発覚の端緒となった動画を誰がマスコミに流したのか「内部告発者捜し」もあったと指摘した。
報告書案は「市長としての資質に著しく欠ける」と結論付けており、市議会は4月27日に不信任決議案を審議する見通しだ。市議会(22人)の3分の2以上の議員が出席し、うち4分の3以上が不信任決議案に賛成して可決されれば、冨田市長は10日以内に議会を解散しないと失職する。【三角真理】
記者会見で詳細語らず
26日に池田市役所であった冨田裕樹市長の記者会見。辞職する意向を表明した冨田氏は市役所に家庭用サウナを持ち込むなど一連の問題・疑惑について「反省している」としたものの詳細は語らず、「事実ではなく、権力闘争が根本原因」と主張する場面が目立った。主な一問一答は次の通り。
――辞める時期は高齢者の(新型コロナウイルス)ワクチン接種が終わった時と言うが、来年なら来年まで市長として働くのか。
市民にワクチンを全部提供し終えるのは1年くらい、1年よりもかかるというのは見通すことができる。65歳以上の接種の対象者は1年とか先になることは想定しづらい。
――騒動についての記者会見は後日と言っているが、いつやるのか。
繰り返しになるが、今の頭の中はコロナ対策をやりきることしか考えていない。明日、(市議会で)不信任決議案が可決されると高齢者を危険にさらすことになるので、何とか回避してほしいとしか考えていない。明日(結果が)分かった時点で、百条委や一連の報道内容について答える準備は期日を設けて案内したい。(5月)中旬くらいまでには。
――騒動の背景に権力闘争があると強調しているが、それがなければ今回の結果に至らなかったのか。
一連の報道、私は事実だと思っていないが、事実だとされている案件に関して、一つ一つ言いたいことはある。しかし市長としてどんなことがあろうが、不徳の致すところ。
――見ようによっては責任転嫁だ。
私が当選した後から「2年以内に冨田を必ず辞職に追い込む」という話はあった。サウナが政局の具として出ていた。秘密保持契約と言われるものも私が指示したものではない。今回の報道、反省すべきところは反省している。一方で、もっと池田の闇の部分を顕在化しなきゃいけない部分があるだろ、という思いは池田の市民の皆さんは比較的多く理解してくれている。
――反省すべきところはどこか。
一連の騒動、サウナきっかけに、市民の皆様や世間の皆さんをお騒がせして、心配や迷惑をかけ、市政を停滞させた。包括的な責任、けじめをとらないといけない。一方でパワハラを認めたから責任をとったのかというと違う。一つ一つ、これは私の責任、これは違う、としっかり準備して明確に説明したい。
――市庁舎の私物化じゃないかという意見もある。反省しているか。
最初に(10月の会見で)何度も謝罪した。政治家たるもの、法的にも庁内の常識にも問題なかったとしても、世間一般の方々からご理解いただけないことは市長の立場として反省しないといけない。そこは襟を正して反省したい。
――不信任案が可決された場合、議会を解散するのは高齢者をより一層危険にさらすことになる。
不信任案が可決された場合、私は必ず辞職するので、必ず選挙は行われる。そのとき議会の選挙を行うか行わないか。議会の選挙と市長の選挙がずれると選挙費用がかかる。選挙をやるとなれば同日の方が。
――明日、虚偽証言の告発の議決もある。その点に関しての弁明はないか。
受理される対象にならないと思っている。マスコミを通じたパフォーマンス。冒頭で述べようかと思ったが、顧問弁護士やリーガルチェックが必要なことに関してはしっかり準備して回答したい。
――辞職を決めたのはいつか。
けじめと責任を取りたいという思いは(一連の報道が出た)当初から。当時、都構想の重要な時期にフォーカスされ申し訳ないと思っていた。ギリギリまでやれることは全部やりつくしてきた。もうこの手段しかないとなったのは昨日の夕方。信頼する、普段からご指導いただいている方々に相談した。
――これまで会見を開かなかった理由は。
百条委設置と言われる法的行使をもった権力闘争がある。委員会が終了するまでは私も何も述べることができない。法的拘束力が強いので経過を見守るしかできなかった。これからは隠すこともないのでしっかり答えていきたい。
――辞職時期は明言していないが、市民に信用してもらえると思うか。
信用してもらえると思う。これだけマスコミの前で約束している。むしろ反故(ほご)にする方が怖い。【榊原愛実】