「紀州のドン・ファン不審死事件」が3年経って急展開だ。
和歌山県田辺市で2018年、資産家として知られた会社経営野崎幸助さん=(当時77)=が死亡した事件で、県警は28日、殺人容疑で元妻の須藤早貴容疑者(25)を逮捕した。
不動産や金融、酒類販売など幅広く事業を手掛け、多額の資産を築いていた野崎さん。18年5月24日の午後10時半ごろ、自宅で意識を失っているところを須藤容疑者と家政婦が発見。119番通報したものの、その場で死亡が確認された。
その後、体内から致死量を超える覚せい剤が検出されたことから、県警捜査1課は何者かに摂取させられた可能性があるとみて、親族や従業員ら約1000人を事情聴取。自宅などから押収したビールの空き瓶約2000本の鑑定を進めるなど、事件の全容解明は近いと思われたが、進展はなかった。
状況証拠プラスαの有無がカギ
事件の迷宮入りもささやかれた中、ここにきて県警が元妻の逮捕に踏み切ったのはなぜなのか。
「野崎さんの腕などには注射痕もなく、毛髪検査でも覚せい剤の成分は検出されなかった。つまり、亡くなる直前に何者かが覚せい剤を飲ませていたわけで、その時間帯に自宅に設置された複数の防犯カメラには外から入室してきた人物はいなかった。県警はいわば消去法で犯行人物を特定し、捜査を続けていたのでしょう」(和歌山県警担当記者)
県警の執念が逮捕劇につながったということだが、起訴、公判に向けたハードルは決して低くない。現時点で報じられているのは、あくまで状況証拠であり、須藤容疑者が犯行を否認する可能性もあるからだ。
元検事の落合洋司弁護士がこう言う。
「県警は時間を費やし、和歌山地検や上級庁(大阪高検)などと協議の上で逮捕したのでしょうから、状況証拠プラスαがある可能性が高い。例えば容疑者が当時、覚せい剤を入手していた、あるいは保持していたという裏付けが取れた、などです。覚せい剤はそう簡単には手に入りませんからね。つまり、容疑者が犯行について手段や方法を行使できる立場にあった、などです。それでも容疑者は否認したり、弁解したりするのでしょうが、県警はそれらを十分、排斥できるだけの証拠を積み上げている可能性が高いとみた方がいいと思います」
今後の捜査の行方に注目だ。