摘発のきっかけは、またしても広島の有名な組織だった。
歌手のASKA(61)に覚醒剤を密売した指定暴力団住吉会系幸平一家「2代目大昇会」の会長、藤本政弘容疑者(82)ら男女5人が23日、覚醒剤取締法違反の疑いで警視庁組織犯罪対策5課と広島県警などの合同捜査本部に逮捕された。同会は新宿区歌舞伎町に組事務所を構え、違法薬物の密売を資金源としていたことから「新宿の薬局」と呼ばれていた。
かつては歌舞伎町周辺で出回っていた違法薬物のほとんどを大昇会が密売していたといわれたほど。警視庁は2013年から約1年半かけて暴力団関係者39人と客33人を逮捕し、1億円分の覚醒剤のほか、大麻やMDMAを押収。壊滅状態に追い込んだとみられていた。
それから1年以上が経った16年8月ごろ、警視庁は指定暴力団「共政会」(広島市)が大昇会の組員から薬物を入手しているとの情報を得て捜査を再開。共政会は「仁義なき戦い」のモデルとなった組織である。
広島県警は6月、共政会が6代目山口組系兼一会(大阪市)の組員から覚醒剤を調達するという情報をつかみ、2次団体の組長2人を含む4人と兼一会組員を逮捕。組長らは、末端価格590万円の覚醒剤98グラムを110万円で仕入れていた。
「兼一会の植野雄仁会長は神戸山口組の井上邦雄会長がトップを兼任する山健組のナンバー3やったんやが、昨年、内紛を起こし、会長から絶縁処分を下された。それで組ごと6代目山口組の橋本弘文統括委員長率いる極心連合会に移籍したんや。一方、“新宿の薬局”大昇会の上部団体である幸平一家の加藤英幸総長は神戸山口組の結成式に招かれるほど、井上組長とは関係が深い。要するに敵対する2つの組織から買うとったんや。かつては『ウチと商売すんのか、向こうと取引すんのかはっきりせんかい』となっとったんやが、シノギがきつうなって、そんなことも言うてられへんようになったんや」(捜査事情通)
共政会がヘタを打ったことで、山口組系組員と住吉会系組員の摘発につながった。