4月に入り、高齢者への新型コロナワクチン接種が始まった。だが、医療従事者への接種は全体の25%にとどまっている(4月19日時点)。高齢者への接種も、各県わずか数百~千人レベル、未実施も9県あるので全国でおそらく数万人だ。高齢者人口は約3617万人だから、1週間かけてようやく0.1%に達したかどうかだろう。 これほどまでに接種が進まないのは、ひとえにワクチンの供給不足による。 それでも高齢者への接種が4月12日から開始されたのは、何としてもアナウンスどおり実施したかった政府の思惑だろう。要するにアリバイ作りだ。それがいかに微々たる数でも、「4月半ばに高齢者への接種を開始した」という記録は残る。 アメリカでは新型コロナワクチンがこれまでに約2億3100万回接種され、屋外でのマスク着用を不要とする日も近そうだ(ブルームバーグ)。対照的に日本は、過保護なワクチン政策の結果として、供給体制の脆弱性が明るみになった形だ。 ■出遅れた国産新型コロナワクチン 供給や副反応など、新型コロナワクチンに問題や懸念が生じるたびに、国内では「国産ワクチンはどうなってるんだ」という声が上がる。 たしかに「日本製」「日本ブランド」に対し多くの人が信頼を寄せ、漠然と安心感を持っていることと思う。国産ワクチンができれば「打ちたい」という人はいるだろう。 だが、国産の新型コロナワクチンは開発過程にも、また実用後のビジネス的観点でも、問題が山積している。 現在までの開発状況(主な4事業)は以下のとおりだ(厚労省資料)。 アンジェス以外、第Ⅲ相(フェーズ3)にもこぎつけていない現実に愕然とする。第Ⅲ相試験では、より多くの被験者を集めねばならないが、はたしてどれだけの人が挙手するだろう? すでにファイザーのワクチンの接種は始まっている。アストラゼネカとモデルナも承認申請中で、5月中にも承認の見込みとされる。アストラゼネカは承認次第、国内生産も始まる。 臨床試験(治験)は一般的に、開発中の新薬を先行して、費用負担なく使用できるというメリットが重視される。そのメリットが安全性へのリスクを上回ると判断するからこそ、被験者は応募するのだ。 すでに適切な手続きを踏んで実用化され、実用後も有効性と安全性が世界で示されている3社(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ)のワクチンを、日本国民は無償で接種できる。国産ワクチンに興味がある人も、その安全性や有効性を期待してこそだ。優良な他のオプションがタダで手に入るなら、わざわざ身を挺する理由はないだろう。 ■海外展開も厳しい理由とは?
4月に入り、高齢者への新型コロナワクチン接種が始まった。だが、医療従事者への接種は全体の25%にとどまっている(4月19日時点)。高齢者への接種も、各県わずか数百~千人レベル、未実施も9県あるので全国でおそらく数万人だ。高齢者人口は約3617万人だから、1週間かけてようやく0.1%に達したかどうかだろう。
これほどまでに接種が進まないのは、ひとえにワクチンの供給不足による。
それでも高齢者への接種が4月12日から開始されたのは、何としてもアナウンスどおり実施したかった政府の思惑だろう。要するにアリバイ作りだ。それがいかに微々たる数でも、「4月半ばに高齢者への接種を開始した」という記録は残る。
アメリカでは新型コロナワクチンがこれまでに約2億3100万回接種され、屋外でのマスク着用を不要とする日も近そうだ(ブルームバーグ)。対照的に日本は、過保護なワクチン政策の結果として、供給体制の脆弱性が明るみになった形だ。
■出遅れた国産新型コロナワクチン
供給や副反応など、新型コロナワクチンに問題や懸念が生じるたびに、国内では「国産ワクチンはどうなってるんだ」という声が上がる。
たしかに「日本製」「日本ブランド」に対し多くの人が信頼を寄せ、漠然と安心感を持っていることと思う。国産ワクチンができれば「打ちたい」という人はいるだろう。
だが、国産の新型コロナワクチンは開発過程にも、また実用後のビジネス的観点でも、問題が山積している。
現在までの開発状況(主な4事業)は以下のとおりだ(厚労省資料)。
アンジェス以外、第Ⅲ相(フェーズ3)にもこぎつけていない現実に愕然とする。第Ⅲ相試験では、より多くの被験者を集めねばならないが、はたしてどれだけの人が挙手するだろう?
すでにファイザーのワクチンの接種は始まっている。アストラゼネカとモデルナも承認申請中で、5月中にも承認の見込みとされる。アストラゼネカは承認次第、国内生産も始まる。
臨床試験(治験)は一般的に、開発中の新薬を先行して、費用負担なく使用できるというメリットが重視される。そのメリットが安全性へのリスクを上回ると判断するからこそ、被験者は応募するのだ。
すでに適切な手続きを踏んで実用化され、実用後も有効性と安全性が世界で示されている3社(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ)のワクチンを、日本国民は無償で接種できる。国産ワクチンに興味がある人も、その安全性や有効性を期待してこそだ。優良な他のオプションがタダで手に入るなら、わざわざ身を挺する理由はないだろう。
■海外展開も厳しい理由とは?