福岡県で時短スタート 対策小出しに批判 医療関係者「対応後手」

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の対象に福岡県も追加される見通しになった。県は6日、飲食店などに対する営業時間の短縮要請を全県に拡大したが、県内の新規感染者数や病床使用率などの指標は、4月下旬時点で宣言ラインに達していた。県は「まん延防止等重点措置」で乗り切る方針だったが、1月の2度目の緊急事態宣言に続きまたも国主導で宣言が発令されることになった。
「国の方として広域的な観点から感染防止を図るため宣言導入を判断されたということなので、受け入れざるを得ない」。国による宣言追加方針が報じられた後の午後9時40分ごろから取材に応じた福岡県の服部誠太郎知事は語った。この約3時間前の記者会見で、まん延防止措置適用を前提とした聖火リレーの実施方法を発表したばかりで、知事にとって宣言追加が「想定外」だったのは明らかだ。
感染状況を示す国の指標の「直近1週間の人口10万人当たり新規感染者数」は6日時点で43人。東京都の37人を上回り、4月24日以降、緊急事態宣言発令の目安となるステージ4(感染爆発)の基準(25人以上)を上回り続けている。感染者が急増している久留米市に限れば、地域医療が危機的な状況に陥っている大阪府よりも多い状況だ。
だが県はこの間、地域経済への影響を最小限にとどめるため、小出しでコロナ対策を繰り出してきた。県が福岡市を対象に独自の時短要請に踏み切ったのは4月22日。この時点で10万人当たりの新規感染者数はステージ4の基準に迫っていた。3日後の25日には久留米市も対象に加えたが、既に同市の感染状況は大阪府と変わらない段階に到達していた。28日には西村康稔経済再生担当相が服部知事に更なる時短など追加の対策をするよう打診したが、知事がようやく政府にまん延防止措置の適用を要請したのは大型連休中の5月1日。だがこの際も緊急事態宣言については消極的だった。
もっとも、政府側の対応が早かったわけではない。実は4月16日に開催された政府の基本的対処方針分科会で、専門家からは既に「大阪を想起させるような急激な増加だ」という声が上がっていた。尾身茂分科会長も「明らかに今、重点措置をいろいろ打つタイミングの要件はそろっている」との認識を示した。しかし、政府側は事務局の池田達雄内閣審議官が「引き続き県ともよく連携しながら注視したい」と述べるにとどめた。
この結果、4都府県に緊急事態宣言が出され、7県にまん延防止措置が適用されていた大型連休中、福岡県内で実施されたコロナ対策は県民への外出自粛要請と福岡、久留米両市の時短要請だけだった。連休中の人出は福岡県にも緊急事態宣言が出されていた昨年に比べ大幅に増加した。
携帯電話の位置情報から滞在人口を推定するソフトバンクの子会社「アグープ」のデータによると、福岡市の西鉄福岡(天神)駅付近の5連休中の1日当たりの人出は昨年の3・4倍。また、全日空の福岡―羽田便は9倍、山陽新幹線を利用した関門海峡の往来は5・3倍だった。
福岡市医師会の平田泰彦会長は「感染対策の一手は感染者数がピークに近づいてから打っても収束までの時間が長くなり、行政の対応は後手に回っている印象だ。感染拡大と時短を繰り返すばかりでは市民もすごろくの振り出しに戻ったような感覚で緊張感が失われる。若い人が互いに接触しないようにテレワークを推進したり、PCR検査をもっと大規模に実施したりする取り組みも必要だ」と訴えた。【光田宗義、比嘉洋、吉住遊】
「中途半端」「見通し示して」不満の声も
福岡県内の飲食店などへの営業時間短縮要請は6日から福岡市と久留米市が従来より1時間繰り上がって午後8時までになり、これまで対象外だったその他の市町村も午後9時までの時短営業を求められるようになった。じわじわと要請が広がる状況に、飲食店からは不満の声も上がる。
新たに時短対象となった北九州市。旦過(たんが)市場(小倉北区)近くの焼き鳥店主(69)は「県内で感染が増加している以上、予防策としてやむを得ない」と要請に従うが、国や県の対策は「すべて中途半端だ」と首をかしげる。
閉店時間が1時間早くなる福岡市でイタリアンレストランを経営する50代男性は「感染対策をしながら営業していたのに、連休中に新たな方針が出されていい迷惑だ。小出しの対策ではなく見通しを示してほしい」。久留米市のギョーザ屋「又兵衛」の佐藤佳代さん(51)は「午後9時までだと会社帰りに寄ることもあるだろうが、1時間早まると客は減る。アルバイトや取引がある酒屋なども大変だ」と訴える。【奥田伸一、高芝菜穂子、今野悠貴】