【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記】
「まだ忘れられてないんや……」――。そんなことを思うほど、彼女には自信がなかった。
森友事件で公文書改ざんを強要され命を絶った財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さんの妻、雅子さん(50)。国などを訴えた国家賠償訴訟の最大の焦点は、俊夫さんが改ざんのいきさつについて詳細に記した通称「赤木ファイル」だ。公開を求められた国側の回答期限だった6日、雅子さんの代理人弁護士の事務所は、詰めかけた報道陣で“超密”になった。関心の高さを物語っていた。
この「赤木ファイル」、そもそも俊夫さんの上司だった池田靖さんが、存在を雅子さんに明言している。その録音データを裁判の証拠として提出しているから、ファイルがあること自体は当たり前のことなのだ。
しかし、昨年3月の提訴から財務省は「あるともないとも言えない」と世まい言を繰り返した揚げ句、前回の協議で「探索作業中」と答えてきた。「捜さんでも元上司の池田さんに聞きゃわかるやろ」と言いたくもなる。そこまで不誠実な回答を繰り返してきた財務省のことだ。今回の回答にも正直期待はしていなかった。
ところが、5日の朝日新聞の1面の見出しは「赤木ファイル 存在認める」。財務省が対応を一変させるのか――! そんな驚きの中での報道陣の殺到だった。
6日夕方5時、弁護士事務所のファクスに着信があった。国からの回答だ。
「改ざんの過程等が時系列にまとめられた文書」「特定するに至った」「第4回口頭弁論期日(6月23日)には、本件文書を提出する予定である」
全面降伏ではないか!
■黒塗りは「できる限り狭いものとする」
プライバシー上の問題で一部は黒塗りするとは書いているが「できる限り狭いものとする」とわざわざ記している。この大転換はなぜ勝ち取れたのだろう? それは世論の力ではないかと雅子さんは感じる。マスコミ報道の積み重ねが世の人々の関心を招き、「赤木ファイル」という言葉が知られるようになった。それが財務省に「もう逃げられない」と観念させたのではないだろうか? まさに「民意の勝利」だ。
雅子さんは今、「皆さまのおかげ」をかみしめている。中途半端に終わらせないよう、これからも真相解明を求めていくつもりだ。
(相澤冬樹/大阪日々新聞・元NHK記者)