全国の国立ハンセン病療養所を退所し、社会復帰したものの、再入所した元患者が2001年度以降、少なくとも240人に上ることが読売新聞の取材でわかった。国の患者隔離政策を「違憲」とした同年の熊本地裁判決から11日で20年。元患者の高齢化に加え、根強い差別・偏見による社会での孤立などが背景にあるとみられる。
読売新聞が全国13療養所に再入所者数(一時的な再入所を含む)を聞き、「回答を控える」とした松丘保養園(青森県)と、多磨全生園(東京都)を除く11園から回答を得た。内訳は長島愛生園(岡山県)68人、沖縄愛楽園(沖縄県名護市)56人など。菊池恵楓園(熊本県合志市)や星塚敬愛園(鹿児島県鹿屋市)など九州・沖縄の5療養所が計123人と半数を占めた。
再入所の理由について各療養所は、高齢化による健康面や経済面の不安などから、職員のサポートも受けられる療養所に戻るケースが多いとしている。
厚生労働省によると、国から退所者給与金を受け取っている人は950人。
退所者らを支援する「ふれあい福祉協会」(東京)などが、退所した155人に行った16~17年の調査では、回答時点ですでに再入所していた人が12・2%おり、「再入所したい」との回答も23・2%に上った。退所後に病歴や療養所にいたことを「誰にも話していない」とした人が約2割いた。困り事も「差別や偏見」との回答が3割超に上った。
沖縄県内の退所者でつくる「沖縄ハンセン病回復者の会」には「高齢者施設に入ったが、周囲からのけ者にされた」といった声が寄せられている。同会は「高齢になり、より生きづらさを感じる退所者は多い。差別解消へ啓発を続ける必要がある」と話す。
ハンセン病問題に詳しい敬和学園大の藤野豊教授(近現代史)の話「長い隔離政策で故郷や親族との縁が切れた人が大半で、高齢化が進んだ今、退所者が孤立化しているのが現状だ。社会の中で人間関係を構築できるよう支援する必要がある」
「酔うと話してしまうのではないか」同僚と関係築けず
多磨全生園の山岡吉夫さん(72)は一度は退所し、社会復帰していたが、2012年に再入所した。「うそをつき続けなければならない生活に疲れた」と語る。
11歳で長島愛生園に入所した。療養所内の高校で学んだ後、故郷に一度帰ったが、なじめず、まもなく多磨全生園に入所した。「人口の多い東京なら、自分に関心を持つ人がいない」と思ったからだ。
20代半ばで夜間学校で簿記を勉強した。園ではなく他人の住所を書いた履歴書を提出し、事務の職を得て園を出たが、「酒に酔って話してしまうのではないか」とおびえ、同僚と関係を築けなかった。足に大やけどを負っても、病歴を知られたくないと、病院にも行けなかった。
退職時に上司に病歴を明かしたが嫌な顔をされ、その後、同僚とも会っていない。「家族がいれば違ったかも」と思うが、過去を隠したまま結婚できないとあきらめた。
約10年前に事故で体調を崩したのを機に「独り身では生活できない」と療養所へ再入所した。「気兼ねせずに生きられるここが暮らしやすい。最期までいると思う」と話した。