茨城県境町の一家殺傷事件で、会社員、小林光則さん=当時(48)=夫婦への殺害容疑で逮捕された埼玉県三郷市、無職、岡庭由征(おかにわ・よしゆき)容疑者(26)が事件直前に境町の天候をインターネットで検索していたことが13日、捜査関係者への取材で分かった。犯行後には、境町の不審者情報も検索していたことも新たに判明。県警は、岡庭容疑者が犯行が発覚しづらい悪天候を狙うなどした計画的な犯行とみている。
事件後に不審者情報ないか確認か
捜査関係者によると、岡庭容疑者は一家との接点はないとみられているが、事件前にスマートフォンで小林さん方の現場周辺の地図などの状況を検索。小林さん方を事件前に撮影した動画も見つかっている。
小林さん方は周囲を木々に囲まれ、隣家は約200メートルも離れており、物音などで犯行が容易に発覚しないような立地の民家をスマホなどで無作為に探していた可能性もあるとみられる。
一方、岡庭容疑者はスマホで境町の事件当日の天候を検索していたことも判明した。事件当時は土砂降りの雨で、県警は、争った声がかき消されるなど、岡庭容疑者が大荒れの天候の日を意図的に狙い、計画的に犯行に及んだ可能性もあるとみている。
犯行後には、周辺の不審者情報も確認していた。
また、DNAなどの直接的な証拠は現時点では見つかっていないが、県警はこうした岡庭容疑者のスマホの検索履歴や現場の状況などが、岡庭容疑者の犯行を裏付ける重要な手がかりになるとみている。
犯行は医療少年院からでてまもない時期
容疑者浮上の経緯は、当初、有力とみられた顔見知り犯行説の捜査が難航したことからの同種事件の洗い出しだった。
岡庭容疑者は16歳だった平成23年11月に埼玉県三郷市で中学3年の少女の顔を刃物で切り付け、翌12月には千葉県松戸市で小学2年の女児の腹を刃物で刺し、殺人未遂容疑で逮捕された。裁判で「またやっちゃうと思う。自分を変えたい」と話し、さいたま家裁は25年3月、治療教育的働きかけは23歳となるまでの相当長期間を要すると判断。医療少年院送致の処分を決定した。
岡庭容疑者は今回の事件当時24歳で、茨城県警は事件への関連を視野に捜査し埼玉県警に連絡。小林さんの次女(13)が襲われた際に吹き付けられたクマ退治のスプレーを岡庭容疑者が購入していたことなどが判明した。
昨年11月に別の殺人予備容疑で自宅の捜索に踏み切り、硫黄44キロや猛毒成分を含む薬品、10本以上の刃物など約600点を押収。埼玉県警が硫黄貯蔵の違反で岡庭容疑者を逮捕した。
その後、小林さんの子供に複数の男の顔写真を見せたところ、岡庭容疑者が襲った男に似ていると示すなどし関連も次々浮上。茨城県警は今月7日、小林さん夫婦殺害容疑で逮捕した。
調べでは、現場周辺から見つかったレインブーツの痕と、同種類の靴を岡庭容疑者が履いていたことを確認。捜索ではスプレーは見つからなかったが、岡庭容疑者が購入したものと次女が襲われたものとの成分が一致したことも分かるなどした。県警は犯行の状況の解明を進めている。
幼少期には動物虐待
「また事件を起こすと思っていた」。捜査関係者はこう話す。岡庭容疑者は、高校生の時に少女2人を襲った殺人未遂罪などに問われた。関係者や裁判によると、容疑者は地元で多くの不動産を有する家系に育った。家族は「学校から『ダメな大人になる』と言われたこともあったが、登校の準備をしてあげるなど甘やかした」という。
小学生で蛇や虫を殺し始めた。行為はエスカレートし、スズメをコンクリートにぶつけ、ネコをいじめると「スカッとした」。中学ではテニス部に入ったがすぐ辞めた。その後、自分の世界に没頭。小5で買い与えられたというパソコンで残虐なシーンを探した。
閲覧履歴を確認した捜査関係者が目をそむけるような人が殺される様子を記録したものもあった。家族も一度動物を虐待する動画を見ているのを目撃したが「ダメだよ」と伝えただけで制限はかけなかった。
進学した高校側から「殺した動物を持ってきたようだ」とも指摘されたが、家族は「おもちゃだ」とする容疑者の説明を信じて疑わなかった。そして実際に少女らを襲う。狙う(少女がいそうな)場所を地図で検索し、犯行後は「どうなったか知りたかった」とニュースを見て確認していた。
治療を望み、18歳から5年間を医療少年院で過ごしたが、30年に出てきて翌年9月に茨城の事件が起きた。