自殺防止や女性支援を行うNPO法人への補助強化、子ども食堂や学習支援などの子どもの居場所づくり――。 政府が孤独や孤立の対策に本格的に乗り出そうとしている。 2月には内閣官房に「孤独・孤立対策室」を設置し、坂本哲志内閣府特命担当相(少子化対策・地方創生)を孤独・孤立担当相に任命した。孤独問題を担当する大臣の設置はイギリスに次いで世界で2例目だという。 ■コロナ禍で増える孤独と孤立 孤独問題への政策はもともと国民民主党が主張してきたもので、今秋までに行われる総選挙をにらみ、菅義偉首相が丸呑みした政策と言われている。 選挙目当てかどうかは別として政府の動きは早い。2月には菅首相も出席して孤独・孤立対策を議論するフォーラムが開かれ、民間有識者からヒアリングを行ったほか、3月には全省庁の連絡調整会議が開かれた。ここでは、SNSの活用や実態把握について、タスクフォースを設置することなどが決まった。 4月16日には心の健康やいじめ、虐待、性暴力、暮らしの悩みなどの相談窓口をまとめて紹介するサイトを開設した。6月にとりまとめられる経済財政運営の指針「骨太の方針」では、実態把握にもとづくNPOへの財政支援の積み増しや住環境の改善などが盛り込まれる見通しだ。 社会的孤立や自殺などの対策はこれまで、厚生労働省が中心になって担っていた。コロナ禍では人との接触が減少し、身の回りに起こるちょっとした不安や悩みを誰にも打ち明けられず、孤独に陥っている人がこれまで以上に増えているといわれる。 自民党の孤独対策勉強会の中心メンバーで、菅首相に対して2月に孤独対策を提言した鈴木貴子衆院議員は、「私たちの提言には客観的に見て社会的に孤立している人々への支援強化、自殺相談窓口の拡充なども含まれているが、アプローチしたいのはもっと主観的なところ。本人が苦しんでいる孤独、本人が望まない孤独だ」と強調する。 鈴木氏は4年前に自ら感じた子育て中の孤独を振り返る。「長女を産んで間もないころ、何をどうやっても泣きやまない。そのときは死ぬほどかわいい我が子に全否定される感覚だった。お前ではダメ、満足できない、安心できない、と言われている気持ちになった」。 母乳を飲んでくれないと焦る鈴木氏に、夫が気遣って「粉ミルクを飲ませたら」と言葉をかけたが、鈴木氏には「さらに自己否定されているように突き刺さった」と言う。 警察庁によると、2020年の自殺者は前年より912人増えて2万1081人となった。11年ぶりの増加で、特に女性が7026人と過去5年で最多となっている。若者の自殺も目立ち、コロナ禍で生活が行き詰まったり、休校で孤独になったりする生徒や学生たちの姿が想像される。 ■見えにくい孤独にこそ政府支援を
自殺防止や女性支援を行うNPO法人への補助強化、子ども食堂や学習支援などの子どもの居場所づくり――。
政府が孤独や孤立の対策に本格的に乗り出そうとしている。
2月には内閣官房に「孤独・孤立対策室」を設置し、坂本哲志内閣府特命担当相(少子化対策・地方創生)を孤独・孤立担当相に任命した。孤独問題を担当する大臣の設置はイギリスに次いで世界で2例目だという。
■コロナ禍で増える孤独と孤立
孤独問題への政策はもともと国民民主党が主張してきたもので、今秋までに行われる総選挙をにらみ、菅義偉首相が丸呑みした政策と言われている。
選挙目当てかどうかは別として政府の動きは早い。2月には菅首相も出席して孤独・孤立対策を議論するフォーラムが開かれ、民間有識者からヒアリングを行ったほか、3月には全省庁の連絡調整会議が開かれた。ここでは、SNSの活用や実態把握について、タスクフォースを設置することなどが決まった。
4月16日には心の健康やいじめ、虐待、性暴力、暮らしの悩みなどの相談窓口をまとめて紹介するサイトを開設した。6月にとりまとめられる経済財政運営の指針「骨太の方針」では、実態把握にもとづくNPOへの財政支援の積み増しや住環境の改善などが盛り込まれる見通しだ。
社会的孤立や自殺などの対策はこれまで、厚生労働省が中心になって担っていた。コロナ禍では人との接触が減少し、身の回りに起こるちょっとした不安や悩みを誰にも打ち明けられず、孤独に陥っている人がこれまで以上に増えているといわれる。
自民党の孤独対策勉強会の中心メンバーで、菅首相に対して2月に孤独対策を提言した鈴木貴子衆院議員は、「私たちの提言には客観的に見て社会的に孤立している人々への支援強化、自殺相談窓口の拡充なども含まれているが、アプローチしたいのはもっと主観的なところ。本人が苦しんでいる孤独、本人が望まない孤独だ」と強調する。
鈴木氏は4年前に自ら感じた子育て中の孤独を振り返る。「長女を産んで間もないころ、何をどうやっても泣きやまない。そのときは死ぬほどかわいい我が子に全否定される感覚だった。お前ではダメ、満足できない、安心できない、と言われている気持ちになった」。
母乳を飲んでくれないと焦る鈴木氏に、夫が気遣って「粉ミルクを飲ませたら」と言葉をかけたが、鈴木氏には「さらに自己否定されているように突き刺さった」と言う。
警察庁によると、2020年の自殺者は前年より912人増えて2万1081人となった。11年ぶりの増加で、特に女性が7026人と過去5年で最多となっている。若者の自殺も目立ち、コロナ禍で生活が行き詰まったり、休校で孤独になったりする生徒や学生たちの姿が想像される。
■見えにくい孤独にこそ政府支援を