中国の不買運動 外国企業への卑劣な圧力だ

企業には人権を尊重する社会的な責務があるという概念は、国連でも確認されている。中国が、人権弾圧に懸念を示した企業を市場から閉め出す動きは許されない。
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」は、人権尊重を国家と企業の義務とし、問題発生時の適切な対処を求めている。
近年、問題となっているのは、中国による少数民族ウイグル族への弾圧や強制労働だ。欧米の政府が人権侵害を批判し、対中制裁を強めるのに合わせ、企業の側も人権重視の声明や中国からの原料調達の見直しを表明してきた。
欧米企業は、人権問題への姿勢を巡り、消費者や株主の厳しい視線にさらされている。国連の原則に基づく対応は妥当だろう。
これに対し、中国では不買運動や営業妨害の動きが広がった。
スウェーデンの衣料大手H&Mは、ウイグル族居住区で生産された綿の不使用を決めたことで標的となった。インターネットには「二度と買うな」といった投稿が集まり、通販サイトでは商品が検索できなくなったという。
米ナイキや独アディダス、日本のファーストリテイリングも、過去に人権問題への懸念を示したことをネット上で批判された。
中国はネットを厳しく統制している。この問題で批判を黙認しているのは、中国政府による不買運動の後押しにほかならない。
商務省報道官は、「企業は誤ったやり方を正し、政治問題化を避けるよう求める」と述べた。中国市場でビジネスを続けたければ、中国批判を控えよ、という身勝手な姿勢の表れではないか。
正当な経済活動をしている企業が、不当な圧力で中国当局の顔色をうかがうことがあってはならない。中国も、国連重視を強調している以上、ビジネスと人権に関する原則を軽視できないはずだ。
先進7か国(G7)の中で、日本は唯一、対中制裁を発動していない。ウイグル族の問題についても懸念の表明にとどまっている。その分、日本企業は、人権重視の原則をどこまで貫けばいいのか、難しい判断を迫られている。
日本政府は、国連の原則に従い、企業に対する圧力は認められないと明確に表明する必要がある。
G7は、ウイグル族弾圧に関して現地での実態調査の受け入れを求めているが、中国政府は拒んでいる。人権侵害が事実無根だと主張するのなら、なぜ認めないのか。米欧と価値観を共有する日本は、受け入れを強く主張すべきだ。