新型コロナウイルス感染者急増で大阪府内の医療体制が逼迫(ひっぱく)し、救急搬送の現場にも影響が及んでいる。搬送先がなかなか見つからないケースが増え、待機している間に心肺停止になる事例も。救急隊を指揮する消防指令の現場からは、厳しい感染状況が続く大阪の実態が見えてくる。
「一刻も早く動きたいが、病院が決まるまでの時間が長い」。大阪府北東部の枚方市と寝屋川市を管轄する、枚方寝屋川消防組合。大畑隆生・救急課長の表情は厳しい。
感染が急拡大した4月以降、受け入れ病院が見つからない事案が相次いでいる。4月1~25日に救急要請を受けた新型コロナ患者137件のうち、受け入れ病院がなかなか決まらず、搬送開始までに1時間以上かかったのは13件。うち5件は2時間以上を要した。
搬送先が見つからず、深刻な事態を招くケースもある。高齢者施設で療養していたコロナ患者の女性の容体が悪化。入院先がなかなか見つからず、救急車で待機している間に女性は心肺停止状態になった。
新型コロナ患者の入院先は通常、保健所の依頼を受けて大阪府入院フォローアップセンターが調整する。しかし、この場合は一刻も早い搬送が必要だったため、救急隊員が枚方市内の病院に電話して直接頼み込んだ。結局、女性が搬送されたのは救急車の到着から約2時間後だった。
コロナ患者以外の救急搬送にも影響が出ている。4月1~20日までに、4カ所以上の病院に受け入れを要請したのは47件あり、前年同期(24件)の2倍に達した。ベッドが足りないことや、病院側が院内感染を恐れ、新型コロナの疑いがある患者の受け入れを断ったとみられる。
また、自宅療養中の新型コロナ患者は症状が悪化した場合は保健所に連絡するのが原則だが、4月以降は自分で119番する患者が増えたという。断られるのを恐れて「コロナではない」と虚偽の申告をした患者もおり、救急隊の負担になっているという。
夏場にかけては熱中症などの搬送も増加が予想され、大畑課長は「今の状況が続けば救急車が足りなくなってしまうのではないか」と危機感をにじませた。【宮川佐知子】