紀州のドン・ファン殺害3年 関係者「裁判で明らかに」

「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=が急性覚醒剤中毒で死亡した事件は24日、発生から3年を迎えた。先月28日には、殺人と覚醒剤取締法違反の容疑で元妻の須藤早貴(さき)被告(25)が逮捕され、事件は急展開。須藤被告は今月19日に両罪で起訴され、今後は裁判員裁判で審理される。生前の野崎さんを知る関係者は「真相を明らかにしてほしい」と訴える。
田辺市の閑静な住宅地にある野崎さんの自宅。須藤被告が逮捕された4月28日は大勢の報道陣でごった返したが、その後、静けさを取り戻した。急死から3年を迎えた5月24日は立ち入り禁止の規制線が張られ、小雨が振る中、道行く人は少なく、ひっそりとしていた。
近くに住む40代の女性は「きょう(野崎さんが)亡くなり3年というのは知らなかった。裁判がどうなるか注目したい」という。
市内にある野崎さんの墓では、真新しい赤や白の花などとともにビールが好きだった野崎さんのために缶ビール2本が供えられていた。墓の側面には、須藤被告の野崎さんとの結婚当時の名前で「野崎早貴建之」と刻まれていた。
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野崎さんの自宅の工事を担い、約20年のつきあいがあるという白浜町にある工務店の男性社長(59)は「商売熱心な人だった」と生前の野崎さんを振り返る。野崎さんとは何度も食事したことがあるといい、「いろんな人を呼んで食事するのが好きだった。呼ぶのは安心できる人、好きな人で、寂しかったのだと思う」と思い起こした。裁判に向けては「これだけ世間を騒がせた事件の真相が明らかになってほしい」と望んだ。
また野崎さんがよくモーニングを食べに訪れていたという田辺市内の喫茶店の女性従業員(47)は、野崎さんが亡くなったことを「寂しい」と打ち明ける。「家政婦や会社の従業員と来ていて、30分ぐらい店にいた。モーニングを持っていくと『ありがとう』と言ってくれた」と振り返り、「すごく礼儀正しく、悪い人ではないのではないか」と話した。
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野崎さんは、少なくとも約13億円にのぼる遺産を市に寄付する内容の遺言を残している。
市によると、平成30年9月、和歌山家裁田辺支部から市に遺言書の存在を伝えられ、令和元年に支部に相続が承認された。遺言書の日付は、死亡の5年前の平成25年2月8日だった。
市には遺産額を確定する作業が残っている。評価額が確定していない土地や建物のほか、野崎さんが貸金業を営んでいたことから、返還されていない債権もあるため、算定に時間がかかっている。
須藤被告は法律上、殺人罪で刑が確定すれば、遺産額の半分を受け取る権利を失う。
市は、算定額を確定後、須藤被告側と分割の協議をするとしていたが、裁判の判決次第では、須藤被告が分割協議の対象から外れることになる。
一方、野崎さんの兄ら親族は昨年4月、市が寄付の前提とする遺言書の無効確認を求め和歌山地裁に提訴。遺言書はコピー用紙1枚に赤ペンで手書きされ、熟慮の末に作成したとはみられないなどとして係争中になっている。
市が野崎さんの寄付を受け取れるかどうかは、なお紆余曲折が予想される。