院内クラスターで感染60人、重症化も…院長語る変異株の怖さ

全国で新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、いまだ続発するのが「院内感染」だ。厚生労働省の助言機関によると、4月1~23日に5人以上の感染者が発生した医療機関は全国で51施設。重症患者を受け入れている近畿大病院(大阪府大阪狭山市)でも4月末からクラスター(感染者集団)が発生し、今月17日までに計60人が感染し、病床に余裕がない中、重症に転じ治療を受けた人もいた。感染対策を徹底する院内で何が起きたのか。(小川原咲)
「院内で感染者はときどき出ていたが、ここまで拡大したことはない。クラスターが起きたのは変異株の影響が大きいのではないか」。5月中旬、産経新聞の取材に応じた東田有智(とうだ・ゆうぢ)院長はこう分析した。
4月27日、近大病院から別の病院へ転院した患者の感染が判明した。この患者と同じ病棟にいた入院患者らにPCR検査を行ったところ、新たに3人の感染が分かった。結果判明時点で、うち1人はすでに隣の病棟へ移っていた。
感染拡大の可能性があると判断した同病院は、2病棟の入院患者ら約200人にPCR検査を複数回実施。5月10日までに計41人の感染が明らかになった。また時期をほぼ同じくして、この2病棟とは別の病棟でも新たに19人が陽性となった。
同病院の5月17日時点での感染者は計60人。このうち同月5日と8日に計2人が死亡したが、いずれもコロナとの関連性は分かっていない。
感染者の中には重症に転じた人もいた。「他の病院に移ってもらうわけにはいかないので、外部からの重症患者受け入れを止めざるを得なかった」と東田院長。「第4波」対応のために15床に増やした従来の重症病床を使い、こうした“想定外”の対応を迫られたことも。
クラスターの影響はコロナ以外の診療にも及んだ。4月28日から5月10日までは、重篤な病気やけがの治療を担う「3次救急」の新規患者の受け入れを停止。一部の手術も一時的に制限した。
マスク着用や手洗いといった基本的な対策や厳しい面会制限など、感染対策は徹底していたはずだった。それでもウイルスが入り込み、感染は一気に拡大した。
事態収束に向け、スタッフは大型連休をほぼ返上して対応にあたった。東田院長は「ここまで防御しても感染が広がった。ウイルスの量や接触の程度は関係ない。想像以上に変異株の感染力は強いということだ」とこぼした。