ゴールデンウィーク最終日となった5月6日午前3時頃、暗闇の中にぽつんと灯りのともる兵庫県警丹波署管内の交番に若い男が現れた。男は無人だった交番の受話器をとり、警察署に「中学2年生の少女と心中しようと思ったが、死にきれなかった」と自ら通報。男は駆けつけた署員を丹波市氷上町新郷のゴルフ場のクラブハウスへと続く林道へと案内した。
「そこにはあおむけで死亡した女子生徒の遺体が放置されていました。目立った外傷は見当たりませんでした」(地元事件担当記者)
ネット上で知り合った女子生徒
その後、死体遺棄容疑で逮捕された男は、住所不定、無職の西田裕一容疑者(23)。所有する運転免許証の住所は遠く離れた鹿児島県だった。西田容疑者は「4月に会社の福岡の寮を出てここまで車中泊をしながら軽乗用車で(丹波市に)来た」「女子生徒とはネットで知り合いSNSでやりとりした」などと話し、容疑を認めたという。
「自殺願望のある男と女子中学生がネット上で出会い、実行したが男だけが死にきれなかったようです。県警の捜査1課も捜査に加わっていますが、基本は所轄署が担当しており、事件の扱いとしては小さい。中学生が亡くなったのは痛ましいですが、心中目的だったことや犯人が自首したことなどから、マスコミから注目を集めることもなかった」(同前)
女子生徒の遺体の近くには練炭の燃えカスが残されており、後の司法解剖で死因は一酸化炭素中毒と判明。丹波署は西田容疑者が女子生徒と落ち合った時間について、遺体が見つかる前日の5日午前6時20分頃と発表した。
事件に新展開 わいせつ目的誘拐容疑で男を逮捕
「2人は早朝に合流し、その約20時間後に女子生徒が変わり果てた姿で発見されたことになります。前日5日には、家族から行方不明届が出されており、その直後に悲劇が起きてしまった。西田容疑者と女子生徒の年齢差は気になりましたが、一緒に死のうとしたが、どちらか一方が死にきれなかったというケースはよくあるんです。その場合は自殺幇助などで起訴されます」(同前)
ありふれた悲劇。そう結論付けられるかと思われていたところ、同月16日に事件は新展開を迎える。丹波署が男をわいせつ目的誘拐容疑で逮捕したのだ。
「これには驚きましたね。今回は、女子生徒の依頼に応えた自殺幇助で再逮捕かな、と思っていたら、わいせつ目的の誘拐ですから。死の間際に魔が差してわいせつ行為に及んだだけでは、誘拐時にわいせつ目的だったとはいえない。兵庫県警が『最初からわいせつ行為が目的だった』と判断する材料があったということでしょう。女子生徒の体内に体液が残っていたなどの客観的な証拠があるのだと考えられます」(同前)
西田容疑者に心中する気はあったのだろうか。別の社会部記者は「遺体の下半身の服が脱がされていた、という話もある」と語る。
「他にも遺体の発見状況にはおかしいことが複数ある。死因は一酸化炭素中毒と判明したが、遺体は車の中ではなく林道に放置され、練炭の燃えカスもその近くで見つかっています。現場の状況からは、『車内で練炭によって一酸化炭素中毒死した女子生徒を車外に運んだ』ということになるわけです。女子生徒を車外に運んだ理由は何なのか。女子生徒が死亡した後にわいせつ行為に及んだ可能性もあります」
「『一緒に死のう』と誘い出してエッチなことを…」
捜査関係者によると、西田容疑者はわいせつ目的誘拐についても容疑を認め「死にたいという女の子を『一緒に死のう』と誘い出して、エッチなことをしようと思っていた」と供述しているという。
近年、自殺願望のある女性を食い物にする卑劣な凶悪事件が目立つ。
特に世間に大きな衝撃を与えたのが、神奈川県座間市の自宅アパートで男女9人をロープで首を吊って殺害し、遺体を解体していた白石隆浩死刑囚だ。9人のうち多数の被害者が自殺願望を持っていた。最初の被害者となった当時21歳の女性はTwitterで自殺に関する投稿をしており、これを見た白石死刑囚が「首吊り士」というアカウントからダイレクトメールを送り“釣って”いる。
白石死刑囚は法廷でなぜ自殺願望のある女性ばかりを狙ったのかを問われると「口説きやすい。操作しやすい」と言ってのけた。白石死刑囚は、殺害した8人の女性いずれにも性的な暴行を加え、現金を持っていた被害者からはそれを奪い、あらゆる自らの欲を満たしていた。
コロナ禍で多発する心中や心中未遂
新型コロナウイルス禍で自殺は増加傾向にある。厚労省のまとめによると、2020年の自殺者数は2万1081人で、11年ぶりに前年を上回った。毎日、50人以上が自殺していることになる。心中や心中未遂は多く発生しており、2021年3月には浜松市天竜区の山中で、ネット上で知り合った33歳の無職の男と15歳の中学3年の女子生徒がテント内で練炭自殺をしようとして、女子生徒だけが死亡した事件も発生した。
自殺に関するインターネット上のサイトも多くあり、身勝手で痛ましい犯罪がマッチングされないことを祈るばかりだ。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))