熊本・元町議殺害、計画的か 拘束・静かな犯行… 事件1週間

熊本市南区城南町の民家で旧城南町議だった中村尊徳(たかのり)さん(74)が手足を縛られた状態で見つかった不可解な殺人事件は、31日で発生から1週間となる。熊本県警は熊本南署に捜査本部を設置し、約120人態勢で捜査を進めるが、いまだに犯人逮捕には至っていない。農業を営み、温厚で住民から親しまれた中村さんがなぜ殺害されたのか。犯人は誰なのか。県警は絞り込みを進めている。
事件は24日午前6時15分ごろ、同居の妻(69)が、自宅の寝室で中村さんが両手首と両足首をひもで縛られ倒れているのを見つけ、発覚した。中村さんの口と鼻は粘着テープで塞がれていた。同日午前11時45分ごろには約4キロ西の同県宇土市花園町の路上で中村さんの軽トラックが鍵がついたまま止まっているのを捜査員が発見。司法解剖の結果、首に圧迫痕があり、同日午前0~6時ごろに窒息死したことが判明した。
遺体発見時、自宅玄関は外側から鍵がささったままになっていた。県警は、犯人が事前に入手した鍵で玄関から侵入して抜き忘れたのか、何らかの偽装のために鍵を残したのか、慎重に調べている。室内などから毛髪や指紋、足跡など数百点を採取した。
犯人の目的は何か。寝室から見つかった中村さんの財布には小銭だけが残り、紙幣は入っていなかった。だが、捜査幹部の一人は、中村さんの手足を縛るなどある程度の計画性があったと推測し、突発的に金銭を狙った犯行の可能性は低いと見る。別室で寝ていた妻は「物音に気づかなかった」と話しており、激しく争うなど大きな音を出すことなく中村さんを殺害し、軽トラを奪って逃走したとみられる。県警はその手際のよさから複数犯の可能性もあるとみている。
中村さんは、熊本市と合併する前の旧城南町で町議を1999~2010年に3期務め、03~07年には副議長も務めていた。市農業委員会の農地利用最適化推進委員を務めるなど地域の信頼は厚く、稲作などをしながら休日には仲間と釣りに行くのを楽しみにしていた。遺体で発見される前日の23日にも朝から釣りに出かけ、同日午後10時ごろにスマートフォンで友人と釣りの話をした後、何者かに襲われたとみられる。
23日に一緒に天草に釣りに行った近所の男性は「恨みを買うような人じゃない。物騒な話は聞いたことがない」と語り、犯人逮捕を願っていた。【栗栖由喜、中村園子】
中村尊徳さん殺害事件を巡る主な経過
5月23日
午前8時ごろ 中村さんが友人2人と熊本・天草に釣りに出かける
午後4時ごろ 帰宅
午後4時半~5時ごろ 中村さんが釣り仲間に電話
夕方 軽トラックが自宅に止まっているのを妻が確認
午後9時ごろ 中村さんが妻と話した後、就寝のため寝室に
午後10時ごろ 釣り仲間から中村さんのスマートフォンに電話がかかる。数分間、釣りの話などをする
24日
午前0~6時 司法解剖で判明した死亡推定時刻
午前6時15分ごろ 中村さんが両手首と両足首をひもで縛られ、口と鼻に粘着テープを貼られて寝室に倒れているのを妻が発見。家の玄関には鍵がささったままだった
午前11時45分ごろ 中村さん宅から約4キロ西の熊本県宇土市花園町の路上で、鍵がついたまま放置されている軽トラが見つかる