生後10カ月の健診、1年2カ月休止 失われる異変察知の機会 札幌

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、札幌市が生後10カ月の乳児を対象に行う健診が約1年2カ月にわたり休止を余儀なくされている。発生から2年を迎えた2歳児衰弱死事件でも異変が確認されるなど、乳幼児健診は家庭環境や虐待の有無などを知る手がかりとなるが、子育ての支援団体は「親子の様子を知れる重要な機会が失われている」と指摘する。【土谷純一】
通常、同市は4カ月▽10カ月▽1歳6カ月▽3歳▽5歳――に健診を実施。このうち、1歳6カ月と3歳は法律で義務づけられている。
2019年6月の衰弱死事件後、札幌市の検証部会がまとめた報告書によると、2歳6カ月で衰弱死した池田詩梨(ことり)ちゃんは、4カ月健診で身長58・4キロ、体重5・5キロと確認された。体格が小柄で担当医師は2カ月後の経過観察のための来所を求めたが、母親の莉菜被告(23)=保護責任者遺棄致死罪で1、2審有罪判決・上告中=は行かなかった。
10カ月健診は受けず、1歳6カ月健診で身長68センチ、体重6・75キロと確認され「極端な成長不良」として来所を指示されたが、またも訪れなかった。
報告書は、保健師や市内部の関係部署での情報共有がなされず「健診は本児の状況を把握する最大のポイントだったが、貴重な機会を逸した」と指摘。事件を契機に乳幼児健診の重要性が改めて浮かび上がった。
しかし、新型コロナの影響を受け、市は20年3月に全ての健診を休止。その後、再開と休止を繰り返した。ただ、10カ月健診に限っては同年4月以降滞り、今年度中は再開しない方針。代替策として、発育状況などに関する質問を並べた「セルフチェック表」を送付し、回答者には個別に対応している。
だが、4カ月健診から1歳6カ月健診までの約1年2カ月間、行政と親子が定期健診を通じて対面する機会はない。市地域保健・母子保健担当課は「じくじたる思い。緊急事態宣言などで、全体的に健診をやめざるを得ないことが多く、再開した際に滞っていた健診を行うには、10カ月をやめるしかない」と説明する。
同市で子育て支援を行う市民活動団体「NPO北海道ネウボラ」の坂本千春代表(42)は「10カ月は非常に重要な時期だが、ちょっとした不安を聞くなどする機会がなくなっている。母親が自ら連絡するのはハードルが高く、不安が積み重なるとリスクが増す」と危惧する。
若い一人親家庭を訪問するなどして支援物資を届けたり、悩みを聞いたりする活動を通じ、坂本さんは「コロナによって、若い親ほど引きこもりがちになっている」と感じる。「行政が主体となり、私たちがフォローする形であるべき。コロナ禍でも、切れ目のない支援ができる体制を作ってほしい」と話す。