競走馬としての役目を終えた引退馬の「第二の人生」を支援するため、山梨県北杜市の牧場施設「ホース・ブリッジ」社は年間約100頭を再調教し、乗馬クラブなどに引き渡している。代表の小須田牧(こすだまき)さん(38)は「多くの引退馬は行き場がない。活躍の場を増やしたい」と話している。【井川諒太郎】
引退馬を支援する公益財団法人「ジャパン・スタッドブック・インターナショナル」によると、競走馬となるサラブレッド系の馬は年間約7000頭生まれる。2、3歳でデビューし、多くが5歳までに競走馬登録を抹消される。その後は飼育費用がかさむなどの理由で殺処分されるケースも少なくない。
「引退馬を再び活躍させてほしい」。乗馬クラブが集中する北杜市で、20歳から競走馬の輸送に関わってきた小須田さんは多くの調教師に求められてきた。その期待に応えたいと考えたのが、2016年の同社設立の動機。実家の牧場施設を調教場所として使い、県の馬術場職員だった2人を調教師として迎えた。調教師の安永博紀さん(42)は「全ての馬を救えなくても、少しでも多くの馬を長生きさせたいと思う」と話す。
ただ、会社の運営は簡単ではなかった。馬1頭につき月10万円ほどの飼料代がかかり、一般の人が乗れるようになるまで半年を要する馬もいる。
だが、小須田さんが北海道から鹿児島まで馬を輸送するうち、会社が知られてきた。都心を中心に乗馬クラブが相次いでオープンし、馬の需要が高まったことも追い風になり、少しずつ軌道に乗った。昨年は約100頭を全国に送り出すことができた。小須田さんは「かつて競走馬として育てた調教師から感謝の言葉ももらえる。引退馬の殺処分は世界的にも問題になっているので、再調教する馬を増やしたい」と抱負を語る。
引退馬への支援、全国でも
引退馬への支援は全国でも広がっている。日本中央競馬会(JRA)は、乗用馬などへの転用がセカンドキャリアにつながると位置づけ、17年12月に「引退競走馬に関する検討委員会」を設置。昨年末から試験的事業として、再調教をする団体などに奨励金を交付している。
一方、乗馬の普及を図る全国乗馬倶楽部振興協会(東京)は、昨年から「引退競走馬杯」を開催。昨年は茨城県や北海道など5会場で160頭の引退馬が出走した。