◆2年間で8億4000万円もの売上げ
新宿・歌舞伎町でキャバクラ店を無許可で営業したとして、ユーチューバーとしても活動していた桜井野の花(本名・渚りえ)と従業員の男が逮捕された。
渚容疑者は今年1月、新宿歌舞伎町のビルで従業員の男の名義を借りて無許可でキャバクラ店を営業した疑いがもたれている。店はこの2年程の間に8億4000万円の売り上げがあったと報じられている。
桜井野の花といえば今年2月、もう一つの経営店だったキャバクラ「花音」での逮捕劇が記憶に新しい。風営法で定められた午前1時までの営業時間に従わなかった「風営法違反」と立ち入り拒否の容疑で店長を含む6人の男性従業員が逮捕された。
2度に渡るカリスマキャバ嬢の逮捕劇に「名義の又貸しなどの違法キャバクラは数年前まではわりとよくあった」と語るのは、過去に闇営業キャバクラで働いていた元キャスト。今回の2度に渡る逮捕劇について彼女達に思うことを聞いてみた。
◆最近は六本木や歌舞伎町もホワイト化していたのに…
「かなり前のことになるのですが、六本木にあった違法キャバクラで働いていたことがあります。表向きは普通のキャバクラのように内装が豪華で女の子もドレスを着て接客するのですが、実は裏オプションがあって気に入った女の子がいたら交渉次第で連れ出すことができるんです。
今でいうパパ活の斡旋店みたいな感じで相場はホテルに行って3~5程度。店自体の時給は2000円前後と当時の六本木では格安だったので、女の子はみんなお客さんを連れ出すのに必死でしたね。
でも、お客さんは当然ながら一見様お断り。女の子ばかり増えていって出勤しても1人も客につかないなんて日もあって、すぐにやめちゃいました。当然、その店はしばらくしてガサが入って摘発されたと聞きましたね」
そう語るのは現在は水商売からあがり、現在は昼職に就職した34歳の女性。彼女いわく、以前はそういう違法店がたくさんあったというが、ここ最近は六本木や歌舞伎町のキャバクラもホワイト化しているようだったと語る。今回の報道については、「まだあるんだ、そんな店」と驚きを隠せない様子だった。
◆ボッタクリと違法営業
その一方で、動揺をあらわにしたのは現在は大阪で専業主婦をしているという32歳の元キャバクラ嬢の女性だ。
「私が20代前半の頃は、ぼったくりとか時間外営業のキャバクラなんて当たり前のようにあったのですが、2019年からは大阪府警がぼったくり店の摘発に力を入れて激減したと聞いています。なので、今回のニュースを見て歌舞伎町にはまだこういう店が残っているのかとビックリしましたね。
私も過去にぼったくりキャバクラで何度か働いたことがあるのですが、中でもひどかった店が。料金は1セット5000円、ボトルも6000円~と普通なのですが、メニューの1番下に小っちゃい字で『レディースドリンク 5000円』と書いてあるんです。
女の子もドリンクを頼みまくるので案の定、客は会計のときにブチ切れ……。でも、時給5000円で営業時間は夜8時~朝5時までなので1日働くとかなり稼げましたね。でも普通のキャバクラの店内には必ず貼ってある営業許可証が一切見当たらなかったんです。そこで違法店かなと勘付いて、怖くなって1週間ほどでやめちゃいました」
筆者も夜の街で長い間、取材を続けているが数年前に比べると違法店と思われるようなキャバクラはすっかり摘発されたように感じていた。
今回、逮捕された桜井野の花は昨年3月、元女性従業員に給料の未払いを巡ってトラブルになっている。その件も含めて時間外営業も、コロナの影響で客足が遠のき売上が激減した影響なのだろうか。
◆キャバクラが違法営業するワケ
営業許可を取ればいいだけの話なのに、なぜ違法営業するキャバクラはなくならないのだろうか。その辺りの事情を風俗営業の事情に詳しい『風俗開業経営マニュアル 極秘公開』の著者であるライターの高木瑞穂氏に聞いた。
「違法営業と呼ばれるものの代表的な例として、深夜営業と無許可営業があります。キャバクラは風営法の2号営業の許可を受けて営業しているのですが、2号営業はエリアによって異なりますが24時までというように深夜営業ができません。また、エリアによっては2号営業の許可が下りない地域もあります。
2号営業の許可を受けた店が深夜に営業をすれば時間外営業でアウトです。また、2号営業の許可を得ずに飲食店の許可だけで女性の接待を伴う営業、いわゆるキャバクラを営業した場合ももちろんアウトです」
◆キャバクラのピークタイムは22時から
では、なぜそうした違法行為をしてまで違法な営業を続ける業者はいるのだろうか。その理由はキャバクラがピークを迎える時間が22時以降だからだという。
「コロナ前まではキャバクラのピークタイムは22時からだったんです。一杯飲んでメシを食ってからさぁ遊ぶぞ!みたいなノリですね。そうなると、24時までの営業だと2時間くらいしか遊べないんです。だから、お客さんが帰るくらいまで深夜1時、2時くらいまで看板は消して緩く深夜営業をする店はごくごく普通のことでした。
摘発された店のメイン客は同業者だったと聞きます。こうしたキャバクラの関係者が行くキャバクラというものもあり、そういった店は必然的に違法営業している店となります」
◆“グレー”な方法で営業する店も
中には“グレー”な方法で営業をする店もあるという。
「飲食店の許可だけでキャバクラ営業する店は、女のコを店は雇っていない、たまたま遊びに来ていた女のコが客の男と仲良くなって一緒に席に座って飲んだという建前でやっているところも多いんです。そういう店は女のコは横に付かず、基本的にはボックス席の対面で“接客”します。摘発の言い逃れですね」
警察もこうした店の存在や実態はわかっているというが、高木氏によれば「警察も忙しいので、話題になるときにパクるネタにしているようです」という。と、いうことはオリンピックを控えた7月は違法営業するキャバクラがこぞって摘発される……かもしれないのである。
<取材・文/カワノアユミ>
【カワノアユミ】
東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。裏モノ・夜ネタを主に執筆。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。ツイッターアカウントは @ayumikawano