新型コロナウイルスワクチンの接種が進むなか、対象を「16歳以上」から「12歳以上」に拡大する動きが広がっている。接種のペースを上げて流行を抑える狙いだが、自治体には抗議が寄せられる例もでている。
高校生約80人を対象に6月下旬にも新型コロナウイルスワクチンを優先接種する方針を示している北海道の離島の奥尻町には「未成年への接種は危険」などといった抗議の電話が相次いでいる。
同町などによると、接種の対象となる奥尻高校の生徒82人のうち51人は、札幌市や東京などの島外出身。夏休み期間に帰省した生徒が感染するのを防ぐため、優先接種を決めた。しかし、生徒への接種が明らかになって以降、「未成年には危険だ」などの抗議の電話が数十件寄せられた。新村卓実町長は読売新聞の取材に対し、「接種は希望した生徒のみを対象にしている。島民の安全を守るためにも接種を進めたい」と話した。
6日に12~15歳へのワクチンの集団接種を始めた京都府伊根町には7日朝から接種への抗議や苦情が約140件相次いだ。「ワクチンは未承認」など事実とは異なる内容や脅迫めいたものもあり、町は8日、問い合わせ窓口のコールセンターを停止。中学校では集団接種から、希望者が校外の会場まで個別に出向く方式に変更することを決めた。高校生以上を対象とする和歌山県北山村にも「よそでは高齢者もまだ済んでいない」など多数の批判の電話があった。
厚生労働省は5月末、米ファイザー製ワクチンについて、海外の事例を参考に公費による接種対象を「12歳以上」に引き下げることを決めた。15歳以下の接種は保護者の同意が条件。萩生田文部科学相は8日の記者会見で、「中学生らは個別接種が基本。学校で直ちに集団接種とは考えていない」と強調した。