改竄経緯文書開示へ、自殺した近財局職員の妻の願いは

学校法人「森友学園」をめぐる財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題で、自殺した近畿財務局の元職員、赤木俊夫さん=当時(54)=が、改竄の経緯をつづったとされる文書(通称・赤木ファイル)が、大阪地裁で23日に開かれる裁判に提出される。国側は1年以上にわたり、裁判で存否を明らかにしなかったが、今年5月に存在を認めた。問題の新事実が記された可能性もあり、注目が集まる。
「僕は犯罪行為を…」
《最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。手がふるえる。恐い》
平成30年3月7日。財務省による決裁文書書き換え疑惑が報じられた5日後、赤木さんは、疑惑が事実と告発する手書きの遺書を残し、自宅で命を絶った。
同年6月に財務省が公表した報告書によると、改竄があったのは29年2~4月。当時、大阪府豊中市の国有地の売却額が評価額よりも約8億円安く森友学園に売却された契約をめぐって国会審議が紛糾し、関与を疑われた安倍晋三首相(当時)が、野党の追及にさらされていた。
「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」
安倍氏のこの答弁が財務省内で波紋を広げた。
報告書によると、改竄などの方向性を決めたのは、当時理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏。その上で、首相夫人の昭恵氏や国会議員らの名前が記された交渉記録などを拾い上げ、廃棄や改竄が始まった。ただ、改竄を実行した赤木さんら近財局職員に対する指示や経緯の内容は伏せられたままだった。
赤木さんの死後、最も信頼していた元上司は自宅に弔問に訪れた際、妻の雅子さん(50)に、赤木さんが改竄に関する資料を整理しファイル化していたと証言。赤木さんは涙を流して改竄に抵抗していたと明かし、「改竄なんかやる必要もなかったし、やるべきではなかった」と謝罪したという。
雅子さんによると、赤木さんは国民のために働くことを誇りにしており、改竄に関わるにつれ笑顔は消えた。鬱病を発症して休職。うわ言のように「僕は犯罪行為をした」と繰り返し、命を絶ったという。
真実が知りたい
夫は何をさせられ、なぜ死を選んだのか-。詳しいことは分からない。
「何も知らず、夫が苦しんでいたときに気持ちを共有することができなかった。ファイルを読めば、今からでもあの時の夫を助けられる気がする」
真実が知りたいという思いで昨年3月、国と佐川氏を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こした。
ファイル開示を求めた雅子さんに対し、国側は「探索中」という言葉で向き合うことを避け続けた。しかし、赤木さんの弔問に訪れた元上司との会話を収めた音声データが決め手となり、今年5月に国側はファイルの存在を認めた。
改竄の過程を時系列でまとめた文書や、省内のメールなどが「赤木ファイル」に当たるとして、国は個人情報など必要な箇所に黒塗りを施した上で、23日の審理までに開示すると約束した。
雅子さんは今後も訴訟を続け、佐川氏や元上司らの証人尋問を法廷で求めていくつもりだ。それでも今はただ、「何も隠さず、夫が残したありのままを出してほしい」と願っている。(西山瑞穂)