認知症の新薬 実用化へ効果を見極めたい

認知症の中で最も多いアルツハイマー病の新しい治療法の確立につながるだろうか。日本でも有効活用に向けて、効果を見極めたい。
米食品医薬品局(FDA)は、米製薬企業バイオジェンと日本のエーザイが開発した初期のアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」を承認した。アルツハイマー病の新薬が米国で認められたのは、18年ぶりのことだ。
認知症の人は、世界に5000万人いるとされ、このうち6~7割をアルツハイマー病が占めている。これまで症状を一時的に改善する薬はあったが、根本的な治療薬は見つかっていなかった。
アルツハイマー病では、脳内に異常なたんぱく質が蓄積し、徐々に神経が破壊されていく。アデュカヌマブは、このたんぱく質を除去する世界初の薬だ。病気の進行を長期間抑えられる可能性があり、画期的な新薬だと言える。
ただ、効果を調べる臨床試験の結果には課題も残った。2回の試験のうち、1回は認知機能の低下を2割抑える効果がみられたが、もう1回は有効性が確認できなかった。薬の量が不十分だったことが考えられるという。
FDAは「患者への利益がリスクを上回る」として、販売開始後に再試験を行うことを条件として承認に踏み切った。米国ではその判断に否定的な声もある。製薬企業はしっかり検証してほしい。
日本では、アルツハイマー病の初期段階の人は200万~250万人程度で、100万人以上が投薬の対象になるとみられる。新薬は昨年12月、日本でも承認申請されている。米国の動向を踏まえ、審査を尽くしてもらいたい。
脳内の異常なたんぱく質を調べるには特殊な画像診断装置が必要で、検査施設が限られている。血液検査で判別する方法が開発されており、実用化を急ぎたい。
新薬の費用は、米国で患者1人あたり年間5万6000ドル(約610万円)となる見通しだ。日本で保険適用された場合、医療財政を圧迫する懸念がある。
効果があれば、医療費が増えたとしても、介護費や家族の介護負担は軽減できる。新薬の使用によって介護にかかるコストをどの程度節減できるのかを試算し、薬価や保険が適用される患者の条件を考えなければならない。
アルツハイマー病では、他の薬の開発も進んでいる。高齢化の進行で患者は今後も増えるだろう。将来の根治や予防に向けて、研究を重ねることも大切だ。