新型コロナウイルスワクチンの接種が拡大する中、接種に当たる医療機関が対応に苦戦している。供給されたワクチンを無駄にせず、感染予防対策を徹底しながら日常の診療業務もこなすのは容易ではない。一方、接種予約をしたものの突然キャンセルする人も少なからずいるといい、関係者は「モラルを守って予約してほしい」と訴えている。
「子供が集団接種の予約を取ってくれたので、キャンセルします」「別の病院で3日早く接種できるので、キャンセルをお願いしたい」
5月末からワクチン接種を受け付けている大阪府東大阪市の耳鼻咽喉科「あすくクリニック」では、今月15日までに4件のキャンセルが発生した。いずれも理由は予約の重複で、接種予定日の約1週間前にキャンセル連絡があったという。
厚生労働省によると、個別接種で使われる米製薬大手ファイザー製ワクチンは、解凍・希釈後6時間以内に使い切る必要がある。キャンセルが出たからといって、翌日に回すことはできない。
1瓶で6人分接種できるため、このクリニックでは6人分の予約が集まった時点で自治体にワクチンを配送を依頼、「無駄にならないよう心がけている」。急なキャンセルが発生した場合は、後日に予約している人に連絡を取るなどして対応している。
つまり、キャンセルが出るたびにリストを確認し、連絡をとって調整する作業が発生する。今中知子院長は「今後、ワクチンの予約はどんどん増えると予想されるため、同様のことが起こる懸念がある。ワクチンを無駄にしたくないので、モラルを守って予約をしてほしい」と話した。
今月15日までに計約1400人に接種した大阪市阿倍野区の「にしやま消化器内科」も、キャンセル対応が課題という。西山範(おさむ)院長によると、臨時休診日に1日約330人の接種を行っているが、5人ほどはキャンセルがある。余ったワクチンは職員の関係者や、通院患者らに声をかけるなどし、廃棄にならないよう工夫しているという。
西山院長は「ワクチンが余ったとき、高齢者に『今からすぐに打ちに来てください』とはいいにくい。小さな診療所ほど、代わりの接種者を探すのは大変なのではないか」と話した。
大規模会場、予約率は低迷
大阪府保険医協会が会員の開業医(約4千人)を対象に今月1~9日に実施したアンケートでは、回答した435人のうち229人(52・6%)が、「(ワクチン接種業務で)日常診療に影響が出ている」と回答。具体的な問題としては「予約受付の混乱」が最多の293件で、「キャンセルへの対応」も231件に上った。接種を行っていない診療所にも問い合わせ電話が多く、電話がふさがることもあるという。
自衛隊が運営する新型コロナワクチンの「大規模接種センター」や職場など、ワクチン接種の機会は増えている。一方で、大規模接種の予約枠には「余り」も発生。大阪市の大規模接種会場(インテックス大阪、同市住之江区)で28日~7月4日に実施予定の2万4500人分の予約率は、22日午後5時半時点で約6・8%だ。
市は今月7日に大規模接種会場を開設。65歳以上の高齢者から接種を始めたが予約枠が埋まらず、今月14日からは余った枠で市職員や市立学校の教職員らに対する接種を始めた。16日、余っていた予約枠で接種を受けた市立大池中学の佐藤美帆教諭(42)は「機会があれば早く接種したいと思っていたので、よかった」と話した。
コロナのワクチン接種は、職場以外では自治体が発行する「接種券」が必要だ。このため、大規模会場で枠が余っても、活用できる範囲には限りがある。市は稼働率を上げるため、19日から接種券を持つ64歳以下の市民への接種も始めており、予約率は上昇しつつある。
高齢者の予約動向について松井一郎市長は、「できるだけ自宅から近い場所での接種を希望されているのではないか」と推測。「早く、近く」での接種を希望する住民ニーズに合わせた接種体制の整備が求められている。