ワクチン接種を上司が優先、非正規は後回し。「職域接種」に不満の声も

◆一般企業の「職域接種」で不満続出

沖縄県を除き緊急事態宣言が解除され、限定的ではあるものの飲食店での酒類提供も再開された。ワクチン接種についても「想定を上回るペースで行われている」(民放社会部記者)ということで、医療関係者や高齢者だけでなく、若い世代への接種機会も拡大している。

それには企業や大学などで接種を行う「職域接種」が一役も二役も買っていると見られているが、東京都内の企業に勤務する寺島亮二さん(仮名・30代)は、この職域接種について不満顔だ。

◆上司「各部の部長が最優先だ」

「社員へのワクチンが全員分用意できていないということで、希望者を募って接種する形なのですが、若い社員が予約したいと話していると、“各部の部長が最優先だ”と上司から耳打ちされたんです」(寺島さん、以下同)

年齢や立場を使った明らかなパワハラに違いないのだが、こう言われてしまえば、会社員としては閉口するしかない。

「理解のある上(長)がいる部署では、家族に基礎疾患持ちがいないか、高齢の両親と同居しているのかなどが配慮されたうえで、摂取する人が決まっているらしいのですが。それもごく一部。予約受付のメールが来るたびに即定員一杯になるのに、騒いでいるのは50代までの社員だけ。その上はすまし顔で仕事していますが、あからさますぎてみんな引いてます」(寺島さん)

◆非正規社員は後回し

だれが真っ先にワクチンを打つか、ということで起きるトラブルは予想以上に多そうだが、なかでも目立つのが非正規雇用者への処遇である。全雇用者の5人に2人が非正規雇用者と言われている昨今。ワクチンを巡ってもその冷遇ぶりが際立つ。

「スタッフの4分の3が非正規社員なのですが、ワクチンの案内は非正規には配られませんでした。余剰分が非正規に、という話だったそうですが、家庭内の状況などの聞き取りは行われず、社員が個別に仲のいい非正規の部下にすすめて回っています」

こう話すのは、関西地方の介護系事業会社勤務・坂田春菜さん(仮名・30代)。それからすぐ、坂田さんの元にも「ワクチンを打つか」という話が回ってきたそうだが……。

「予約の方法について非正規の同僚と話をしていると、部署内に未接種の正社員はいないか確認してからにしろ、と社員の上司に釘を刺されました。まずは正社員の接種を完了して会社に報告しなければならない、という立場上の理由もあるようですけど」(坂田さん、同)

◆人間関係がギクシャク

こうなってくると、当然、非正規社員は引け目を感じてしまい、自ら「接種したい」とは言い出せなくなる。

「怒った非正規の同僚は意固地になって、もう意地でも接種しないと。非正規の間でも人間関係がギクシャクするようになってきました。ワクチンさえあればコロナ禍は終わる、と思っていただけに、ワクチンがあっても人間はこうなってしまうのかと……」

関東地方にある大手企業内の診療所勤務・中野真知子さん(仮名・40代)も、ワクチンを巡る社内トラブルについて次のように話す。

「部署によっては、上司の誰々さんが打ってないからまだ予約できないと話している若い社員がいましたね。あと、どんな部署にも必ず一定数いるのが、いわゆる“反ワクチン”の方。自分は打たない、というだけならまだいいのですが、打っている人たちに対してアレコレ言うなど、社内で軋轢が生まれているのだとか」(中野さん)

コロナをめぐり、あらゆる場面で「分断」が起きている。上司と部下、正社員と非正規社員……ワクチンの「職域接種」も例外ではないようだ。

<取材・文/森原ドンタコス>