「飲食店なぜやり玉」「観光客戻る施策を」 都議選告示 街の声

新型コロナウイルス流行収束の兆しがいまだに見えない中、首都の選挙戦が始まった。25日に告示された東京都議選。コロナ禍で苦境や難局に直面した人々は今、何を思うのか。
緊急事態宣言が初めて出されてから1年2カ月。飲食店はこの間、時短要請や酒類の提供停止を断続的に求められ、厳しい経営を余儀なくされてきた。居酒屋グループ「青二才」代表の小椋道太さん(41)は「行政の要請が僕たちの暮らしを左右することを忘れないで。耐えられない人には手厚い支援を」と訴える。
27歳の時に東京・阿佐ケ谷で初めて店を構え、5店まで拡大した。だがコロナ禍で1店は休業、2店は閉店に追い込まれた。売り上げは従来の半分以下だ。
従業員15人のうち4人は働く場所を失った。幼い子供を育てている人もいる。小椋さんは雇用を守る使命感から、新規開店に打って出ることにした。少人数で地酒を楽しむ店なら勝機があると見込み、7~8月に3店を開店する予定だ。
開店資金を3年間無利子で調達できたのは、行政による支援のおかげと感謝している。ただし、時短などの要請に応じた店に対する都の協力金の支給遅れは見過ごせない。「(協力金の)入金までの期間の運転資金がない店は厳しい。要請に振り回される店のことも考えてほしい」。小椋さんの店も、3月上旬までの分しか支給されていない。
東京商工リサーチによると、今月23日時点でコロナ関連の経営破綻は全国で累計1670件、都内だけで373件に上る。業種別で最も多いのは飲食業の286件で、都内は55件。飲食料品卸売業が全国で76件、食品製造業も49件と、飲食関連が目立つ。
政府や都は会食での感染リスクがあるとみて飲食店への措置を続ける。なぜこれほどやり玉に挙げられるのか――。小椋さんは「人が集まる場所はいくらでもある。五輪会場に客を入れるのも違和感がある」と語る。コロナ禍が収束しても、客足が戻るとは限らない。「寄り道せず帰宅することが習慣化してしまった。飲食店のマイナスイメージを払拭(ふっしょく)し、店に再び足が向くような政策を」と願う。
「東京に観光客が戻ってくる施策を講じて」。東京都台東区で「行燈(あんどん)旅館」を営む石井敏子さん(64)は訴える。旅館の主な客層は外国人旅行者。東京オリンピックの当初の開幕時期(2020年7月)が近づくにつれて客は増え、月400人ほどが宿泊したこともあった。五輪中継の観戦用に大型モニターも設置した。しかし、コロナ禍で客は激減した。「お客さんが蒸発しちゃったという感じだった」
五輪が延期の末に開催されても、海外客は来ない。売り上げは9割減で経営は極限の状態だ。仕方ないと思うものの、先行きへの不安も募る。「ワクチン接種を加速してコロナ対策に全力を尽くした上で、安全な東京を発信してほしい。東京に遊びに来て、と言える日が早く来れば」。石井さんはそんなふうに願っている。
新型コロナ患者の増加は医療機関を追い詰めた。東京都品川区の昭和大学病院は昨年末からの感染拡大の「第3波」で病床逼迫(ひっぱく)を経験した。1月上旬のピーク時、準備していたコロナ専用病床数を大きく上回る重症者11人、中等症以下36人を受け入れた。重症者を一般患者用の集中治療室に収容し、救急患者受け入れなどの制限を余儀なくされた。都による当初の医療提供体制の調整について、相良博典院長(61)は「重症者を診る病院、軽症者を診る病院と、機能を分担すべきだった」と振り返る。
都は第3波を踏まえ、一部の都立・公社病院をコロナ治療の「重点医療機関」とし、体制を強化した。回復期の患者を受け入れる病院の確保も進め、対応の改善を図る。相良院長は「今回のコロナ禍で医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さが見えてしまった。都はスピード感を持って対応してほしい」と述べ、若年層も含めたワクチン接種体制の早期充実を求めている。【井口慎太郎、田中理知、黒川晋史】