日本政府が、国内用に調達した英製薬大手アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチン124万回分を台湾に無償提供したことを受け、県内で暮らす台湾出身者の間で感謝を示す取り組みが広がっている。
大津市打出浜の商業施設「Oh!Me(オーミー)大津テラス」内で台湾料理店「台湾食味」と蒸し料理店「ぜろはち」を経営する、許囿鎧(きょゆかい)さん(36)=台湾南部・嘉義市出身=は医療関係者と65歳以上の高齢者に、両店の定食を先着各140人に無料で提供するキャンペーン「台日友好」を実施している。許さんは「台湾ではワクチンが手に入らなくて困っていた。自分たちだけでなく、他の台湾人も皆感謝していると思う」と話す。
日本からワクチンが台湾に到着した4日、許さんに「何とか感謝を示したい」と元同僚の台北市の男性からメッセージが届いた。台湾に届いたワクチンは医療関係者と高齢者に接種されるため、日本の医療関係者と高齢者にまず恩返ししようと、今回のキャンペーンを思い付いた。定食代に充てる資金は男性と許さんが折半した。
許さんの実家は台湾料理屋。台湾名物の魯肉飯定食と鶏肉飯定食が「台湾食味」の一押しメニューだ。新型コロナウイルスの影響で、許さんの店は経営が苦しく赤字が続いているという。それでも、「台湾の人は食事をごちそうするのが感謝の表現方法。台湾らしいやり方でお礼したい」と力強く語った。
「親睦の良き模範だ」
一方、大津市の産婦人科医、王輝生(おうきせい)(日本名・大田一博)さん(73)=台湾中部・南投県出身=は5月28日、茂木敏充外相が台湾へのワクチン提供の意思を示したことを受けて、台湾の大手メディア「自由時報」に寄稿。同30日付で掲載された。「日本は緊急事態宣言が解除されない中、『人溺己溺』(他人が溺れているのを自分が溺れているように思う)の大きな愛の精神で助けてくれた」などとして、恩義を忘れないよう訴える内容だ。
6月初旬、寄稿文を読んだ台湾の医療法人「福和会」の林逸民会長から王さんに「日本にお礼がしたい」と連絡があり、台湾南部・高雄市のマスク製造会社「南六公司」が作ったマスク40万枚が日本に贈られることになった。輸送費は福和会が負担した。9日に台湾を出て、14日に大阪港に到着。25日に王さんの医院に届き、台北駐大阪経済文化弁事処の李世丙(りせいへい)処長や、マスクが寄贈される県や大津市、京都市の関係者が集まった。李処長は「台湾を代表して感謝申し上げたい」と謝辞を述べた。マスクは生活困窮家庭などに届けられる予定。
王さんはこれまで計7回、台湾から日本に届くマスクなどの支援物資の窓口になってきた。王さんは「今回は寄付ではなくお礼。遠慮なく使ってほしい。日本と台湾の間には互いに思いやり、助け合う断ち切れない絆の関係がある。親睦の良き模範だ」と話した。【菅健吾】