新型コロナウイルスのワクチンを巡り、各自治体が年代別にこだわらない「優先接種」の枠を独自に設ける動きが埼玉県の自治体に広がっている。地域の実情を考慮しながら、各自治体が知恵を絞り、早期の接種に動き出している。
映画「キューポラのある街」の舞台となり、鋳物産業が栄えた川口市。現在は製造業だけでなく、サービス業も含めた様々な業種で中小企業が集まっている。総務省の2016年の統計によると、市内にある2万2000事業所の多くを中小企業が占め、約13万6300人が働いている。
市は市内の中小企業で働く従業員やその配偶者を対象に、新型コロナワクチンの優先接種枠を設けた。商工会議所などの協力を受けて職場ごとに接種希望者を取りまとめ、市が医療機関などとマッチングして接種を進める。市によると、すでに2700人ほどが接種を希望しているという。
市は30日、DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者などを新たに優先接種の対象に加えることも明らかにした。
きっかけは、政府がコロナ禍に伴う経済対策として昨年、国民に1人10万円の特別定額給付金を支給した際、DV被害者と思われる人から「自宅から逃げているので受け取れない」との相談を200件以上も受けたことだ。市が東京都との境にあたるため、都内から逃げてきたとみられる人もいた。「ワクチン接種券を受け取れない人も多いのではないか」と考え、市内に住民票がなくても、市内居住を確認できれば接種できるようにする。郵送やネットを通じて、7月1日から接種希望を受け付ける。
伊奈町は、受験を控えた中学3年生(15歳)と高校3年生(18歳)が夏休み中にも2回の接種を終えられるよう、優先接種枠を設けた。町は6月30日に、今年度中に15歳や18歳になる人も含め、接種券を送った。
「夏を制する者は受験を制す」と言われるように、受験生にとって夏休み中の受験勉強は重要だ。町の担当者は「受験生に安心して勉強に励んでもらいたい」とエールを送る。
東京五輪・パラリンピックの射撃競技会場となる朝霞市は、市独自のボランティア181人を優先接種対象とした。東京五輪で、セルビアのレスリング代表チームが7月20日から事前合宿を行う富士見市は、選手団と接触する市職員や通訳らに優先接種を実施する。すでに11人が1回目の接種を終え、合宿が始まる前に2回目も終える予定だ。市の担当者は「選手が実力を発揮できる環境にしたい」と話している。