「ゴルフ好き」近大元教授、私物購入を隠すそぶりなく…社印の偽造も

近畿大医学部法医学教室の経費請求を巡る詐欺事件で、元教授の巽信二被告(66)(詐欺罪などで起訴、懲戒解雇)が大阪府警に詐欺容疑で再逮捕され、大学からだまし取ったとされる金額は計約3900万円に上った。大半は府警から依頼された司法解剖の委託費という「公金」が原資で、趣味だったゴルフの道具などに流用された疑いがある。不正は約10年に及んでいたとみられ、背景に大学の管理の甘さが浮かぶ。
■納品検査なし
巽被告は、大阪市中央区の医療機器販売会社元社員藤戸栄司被告(52)(起訴)と共謀し、司法解剖などで使う医療用品を同社から購入したと装って偽の領収書を提出し、大学から金をだまし取ったとする詐欺容疑で2度にわたって逮捕された。詐取したとされる額は2015~21年で計約3900万円に上る。
近大によると、医学部では研究や業務に伴う外部からの報酬や寄付は大学が受け取り、その9割を教室の経費として割り当てている。経費は、研究や教室の運営以外の目的では使用できず、大学が各教室から領収書の提出を受け、指定する口座に振り込む。
大学は定期的に領収書の約1割を抽出調査しているが、納品の確認まではしておらず、領収書の偽造にも気づかなかったという。
領収書の品目が書き換えられたほか、一部で偽の社印が使われており、近大は「社印の偽造までは見抜けなかった」とする。
近大は調査委員会で再発防止策を検討しているが、医学部のある教員は「大学のチェックはあってないようなものだ」と指摘する。
■ゴルフが趣味
法医学教室と医療機器販売会社の取引は遅くとも11年に始まり、この頃から私物が購入されていた。同社はリストを残しており、目を引くのがゴルフ関係だ。
クラブセットのほか、ゴルフボールを単品で注文することもあった。医療機器販売会社には9年前に10万円以上のゴルフ旅行を手配した記録も残っているという。巽被告は頻繁にコースに通うなど、ゴルフ好きとして知られていた。
巽被告が、こうした私物の購入を周囲に隠すそぶりはなく、藤戸被告が教室まで持ってくることもあった。教室の元職員は「誰も口出しできないと思っていたのではないか」と振り返る。
藤戸被告は容疑を認め、巽被告は当初は否認していたが、その後容疑を認める供述に転じたという。
■司法解剖も水増しか
法医学教室を巡っては、司法解剖の検査数を水増しし、府警に費用を過大請求していた疑惑も生じている。
府警から近大に支払われる司法解剖の委託費は年間数千万円。巽被告が大学から詐取したとされる金の大半はこの委託費が原資だ。府警に提出された司法解剖の報告書は巽被告の名義で、府警は詐欺事件の捜査と並行し、過去5年分全ての報告書について精査を進めている。
巽被告は約40年にわたって司法解剖に携わり、今年2月、警察庁長官から民間人に贈られる最高位の表彰「警察協力章」を贈られるなど、警察の捜査に貢献してきた人物だった。
府警幹部は「水増しをなぜ見抜けなかったのかも含めて、徹底的に調べる」と厳しい表情で話した。