静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区で3日午前に起きた土石流災害は、生死を分けるタイムリミットとされる「72時間」が迫っている。雨が多く、捜索・救助活動も阻まれているが、5日は久しぶりに晴れ間ものぞき、活動が急ピッチで進められた。地域住民らも、生存者の発見に望みをかけている。
この日は、午前6時過ぎから消防、県警、自衛隊などが1000人超の体制で活動にあたった。全長約1キロ、最大幅は約120メートルに広がる現場の中でも、土砂が多い東海道新幹線のルート西側の山など5カ所を重点的に捜索した。
土砂に埋まった国道135号沿いの現場では、上流から茶色く濁った泥水が流れ出る中、がれきを撤去したり、行方不明者の捜索にあたったりしていた。
「ひでえな……。何だ、これは」。初めて現場付近に来た近くに住む中田正さん(59)は言葉を失った。「今も連絡がとれない知人がいる。テレビで映像を見ても、家は流されていると思う。近所の人たちが逃げる際に避難を呼び掛けたようで、ちゃんと逃げていたらいいけれど。72時間も迫るので命が心配だ」。捜索の様子を見守っていた近くの無職、荒木道夫さん(73)は「熱海で生まれたが、こんなことは初めてだ。自分の家も流されたかもしれないが、どうなっているか分からない」と語った。
会社員の荒井政人さん(71)は発生当日、家々が土石流にのみ込まれている様子を目の当たりにしたという。周辺は停電が続き、仕事もできない状態だ。ただ、行方不明者の安否を気遣っている。「正確な人数も分からないが、早く見つけ出してほしい」と話した。
3日に土石流が発生して以来、被災地域では雨が降り続いていた。2次災害の恐れがあることから、現場での捜索活動は断続的な中断を余儀なくされていた。しかし、5日は朝から梅雨の晴れ間が広がった。
県警幹部は「少しでも多くの人命を救出するため、全力を尽くす。今までは悪天候のため、中断を余儀なくされ、歯がゆい状況だったが、今日のような晴れで救助活動に専念できる」と語った。一方、自衛隊幹部は自分に言い聞かせるように言った。「とにかくやるしかない」 【佐々木彩夏、木原真希、木下翔太郎】