国際的なサイバー攻撃などに対応するため、警察庁が2022年度から「サイバー局」を新設することを6月24日、公表した。新たな局の創設は、1994年に刑事局から独立した生活安全局以来となる。
警察庁によれば、昨年1年間に確認したサイバー攻撃とみられる不審なアクセスは、1日平均6506件に及ぶ。前年比で55%増という急増ぶりだ。
社会部記者の話。
「警察庁は新たな組織図の図解入りで詳細な発表を行いました。これまでサイバー攻撃などを捜査してきた警備局、サイバー犯罪を捜査してきた生活安全局などから部署を引き抜き、一体化させることで捜査の効率性を高める狙いです」
組織改編に踏み切ったのは、サイバー空間における捜査の「敗北」の連続が端緒といえる。三菱重工などの安全保障業界へのサイバー攻撃でも犯人すら判らず仕舞い。犯行が海外のサーバーを経由しているというだけで、捜査が頓挫してしまうこともざらだった。
「民間の調査の方が進んでいることすらあった。海外の捜査からは周回遅れという印象です」(IT関係者)
「日本版FBI」の意義と課題
海外ではおとり捜査なども駆使し、違法薬物のネット密売市場などサイバー犯罪のインフラ事犯まで各国の捜査当局が連携して解決する成功例が近年、相次いでいる。だが、
「日本は都道府県警察が主体。地方では人員が限られ、各県警間のレベルにも差があった。国際連携の調整も必要以上に大変だったのです」(捜査関係者)
組織改編の目玉は、サイバー局の設置と同年度に関東管区警察局内に置かれる警察庁直轄のサイバー捜査部隊の精鋭200人だ。戦後に発足した警察庁は、都道府県警察の調整を図るのが主な任務。直接警察活動にあたる部隊ができるのは、皇宮警察を除いて戦後初となる。警察関係者が言う。
「直轄部隊の設置こそ、歴史的な意義が大きい。戦後、米連邦捜査局(FBI)のような警察庁による全国直轄捜査の実現を目指す声が何度も叫ばれてきましたが、実現したのは今回が初めてです。特高警察の再来などを嫌って、自治体警察中心に警察を改組させた“GHQの呪縛”がついに解けることになる。今後は、例えば直轄隊がサーバーを差し押さえ、容疑者を逮捕するケースも想定されます」
オウム真理教事件など全国にまたがる事件が起きるたび浮上してきた「FBI方式」。警察庁が自治体警察の枢要ポストを握ることで代替してきたが、それも限界を迎えていたのだろう。
「ただ、人員約3万5000人、予算約87億ドルという本家FBIに比べれば、規模は圧倒的に小さいのが現実です」(同前)
「日本版FBI」に課題は山積みだ。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年7月8日号)