静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区で発生した土石流災害で、避難所に身を寄せる住民らが12日、一時帰宅した。着の身着のまま避難した人たちは自宅から貴重品や衣服、避難生活のための書籍などを持ち出していた。
土石流による住宅の被害は131棟(128世帯、216人)。約580人が熱海市内の2カ所のホテルで避難生活を送っている。市は今後、各自に自宅の様子を見に行ってもらい、安全で被害がなければ早期の帰宅を促すことも検討している。
一時帰宅は安全面を考慮し、1世帯あたり2人、2時間程度を条件とした。89人が一時帰宅した。市の用意したバスで現場周辺まで移動し、久しぶりに我が家の状況を確認した。
伊豆山地区の後藤光雄さん(75)は土石流の発生直後、99歳の母親を背負って高台に避難。ホテルで避難生活を送っている。12日は貴重品や現金のほか、読書が趣味の母親のために書籍を持ち帰ったという。自宅は土砂の流入がなく「安心した」と話した。
加藤林子さん(85)は電気をつけっぱなし、窓を開けっぱなしで避難していたという。加藤さんは「空き巣が心配だったけれど、貴重品は大丈夫だった」と胸をなで下ろした。自衛官らが暑さから服を脱いで作業する姿を見て、「ありがたくて涙が出た」とも語った。
一方、県は、土石流に巻き込まれたとみられ、身元が分かっていなかった2人の遺体について、古川静子さん(77)と根来敏江さん(69)と判明したと発表した。古川さんの夫の謙三郎さんも行方不明となっている。12日時点で土石流による死者は10人、行方不明者は17人。【深野麟之介、李英浩、上鵜瀬浄】