新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大している。この危機を乗り越えるには、状況の変化に応じた効果的な対策を打ち出さねばならない。
政府は感染者の療養方針を見直すと発表した。入院は、重症者や重症化の恐れが強い人に限定し、従来、入院やホテルなどの宿泊療養が中心だった中等症者や軽症者については今後、自宅療養を原則にするという。
自宅療養の患者には、血中の酸素濃度を測る「パルスオキシメーター」を配り、保健所や地域の医師らが、症状が悪化しないかどうかチェックするという。
医療提供体制の大きな転換である。コロナ対策は感染者を隔離して拡大を防ぐのが基本だったはずだ。狭い自宅で家族に感染させないように療養するのは難しい。
独り暮らしで体調が急変したら、保健所などへの連絡さえ大変だろう。重症化すれば入院させるというが、その見極めは困難で、手遅れになる懸念もある。
軽症者は自宅、重症者だけ入院という機械的な選別で命を本当に守れるのか、疑問が残る。高齢者へのワクチン接種が進む一方、感染力が強いデルタ株の広がりで感染者が急増し、打つ手が乏しくなっているのが実情だろう。
病床確保の重要性は、以前から指摘されてきた。これまでの政府や自治体の取り組みが不十分だったのは明らかである。
今からでもコロナ患者を受け入れる医療機関を増やし、仮設の療養・医療施設を整備するなど、対策の強化に努めるべきだ。
点滴で薬を投与する「抗体カクテル療法」は、重症化の予防が期待される。入院患者だけではなく、外来でも投与できるよう、検討を急がなければならない。
感染対策の切り札であるワクチン接種は、自治体への供給不足もあって、感染拡大の勢いに追いついていない。特に、優先順位の低い現役世代では、希望しても受けられない人が多い。
政府はこれまで、一律平等を前提に人口比で全国にワクチンを配布してきた。現在は大都市が感染拡大の中心地となっており、ワクチンをこうした地域に集中させる傾斜配分も必要ではないか。
緊急事態宣言の対象地域では、活動的な若い世代への接種を優先することも検討に値しよう。
緊急事態宣言は、度重なる発令で効果が薄れている。その場しのぎの対応を繰り返し、漫然と成り行きを見守るだけでは、コロナの収束は見通せない。