「コラ、ワシの道で何してくれとんじゃ」
右手にゴルフクラブを持った前科5犯の覚醒剤中男は、怒鳴り声を上げながら51歳の運送会社の男性運転手に襲い掛かった。
6月20日の午前1時5分ごろ、兵庫県佐用町の中国自動車道上り線の佐用インターチェンジ(IC)付近で、取引先に化学薬品を届けた空のタンクローリー(最大積載量11トン)が第1車線を走行中、一台のパジェロがパッシングをしながら猛スピードで追い上げてきた。
パジェロは追い越し車線を走っていて、タンクローリーを追い抜いた瞬間、前に割り込み、進路をふさいだ。
運転手は慌てて急ブレーキを踏んで停車させた。車から降りてきた男はタンクローリーに近寄り、振り上げたゴルフクラブで運転席と助手席の窓ガラスを叩き割り、ボディーをボッコボコに叩き出した。
「オラ、降りてこんかい」
運転手が恐怖に怯えながら外に出ると、いきなり顔面をどつかれ、腕や足、腰をゴルフクラブでブン殴られた。後から来て停車していた後続車も次々とガラスを叩き割られ、タンクローリーの運転手はその隙に走って佐用ICまで行き、110番通報したが、男はタンクローリーの運転席に乗り込み、アクセルを踏み込み、逃走した。
約2時間半後、現場から約100キロ超離れた大阪府吹田市で岡山県津山市の無職、山本康仁被告(37=傷害罪で起訴)が別件で逮捕され、関与をほのめかしたため、その捜査の終了を待って、兵庫県警佐用署が今月21日、強盗致傷と器物損壊の疑いで再逮捕した。
話は事件に戻る。
強奪したタンクローリーで大阪方面に向かった山本被告は約7キロ東のトンネル内で、10トントラックの前に割り込み、再び進路を妨害。運転手を殴ってつかみ掛かり、「のかんかい」と助手席に追いやり、ハンドルを握った。そして運転手を監禁したままトラックを走らせ、吹田ICで高速道路を降り、ガソリンスタンドで車をぶつけた。停車した瞬間、運転手は助手席から逃げ出し、助けを求めた。山本は棒状のものを持って辺りをウロつき、深夜3時30分ごろ、通りがかりの通行人に殴り掛かり、通報で駆け付けた大阪府警の警察官に取り押さえられた。
「金は奪われてへん。暴行で逮捕した後、検査したら体内から薬物が検出された。これまでシャブ以外にも暴行や傷害など5つほど前科がある」(捜査事情通)
想像するだけでゾッとする事件だが、一体、どんなヤツなのか。近隣住民がこう言う。
「そっちの筋? ちゃうちゃう。ヤクザはワシじゃけん。どんな前科? 普通の前科やで。シャブだけや。酒飲んだら人を殴ったりするけどな」
絶対、関わりたくない。