道路脇に止めたトラックに、後続車が追突する事故が後を絶たない。こうしたトラックの運転手は休憩や仮眠のほか、時間潰しをしていることもあるという。背景には、指定された配達時間の厳守を荷主に要求される労働環境や、都市部に大型車が止められる駐車場が少ないといった問題がある。運送業者からは駐車スペースの確保を求める声が上がる。【高田奈実】
配達時間厳守求められ、駐車場もなく
路上駐車したトラックが、死亡事故の原因になる例がある。神奈川県伊勢原市鈴川の工業団地近くの市道で3月8日午前4時半ごろ、駐車中のトレーラーに乗用車が後方から追突し、乗用車を運転していた30代男性が死亡した。伊勢原署によると、トレーラーに乗っていた愛知県の男性会社員(60)は近くの工場に納品するため、開所時間まで待っていたという。日の出前だが、トレーラーのハザードランプは点灯していなかったとみられる。現場は片側1車線の直線道路で、駐車禁止区域だった。
事故を招いたとして、駐車した側が刑事責任を問われるケースもある。大阪府和泉市では2018年10月、駐車禁止の国道に駐車中の大型トレーラーにトラックが追突し、トラックの男性が死亡する事故が発生。府警は19年2月、男性を死亡させたとして、トレーラー運転手を自動車運転処罰法違反(過失致死)などの疑いで書類送検した。運転手は「車内で仮眠をとっていた」と供述したという。
警察庁によると、運転手が車内にいる状態で駐車中の貨物車に衝突した交通事故は2020年に47件あり、死者は2人だった。
なぜ大型車は路上駐車するのか。元運転手で運送業界の問題を取材するフリーライターの橋本愛喜さんは「トラックが止められる駐車場がないことに加え、荷主の協力もない」と説明する。1990年の物流2法改正で規制緩和が進み、運送業者が増えたことで「価格競争が起きてお客様(荷主)至上主義になり、ドライバーが弱い立場になった」と話す。
事故の一因となっている夜間のハザードランプ無点灯は「エンジンをかけっぱなしにしていると近所から苦情がきたり、運転状況を記録するタコメーターが作動して勤務時間が延び、労働基準法違反になるからだ」と橋本さんはみる。エンジンを切るとバッテリーが上がってしまうため、無点灯を強いられているという。
県トラック協会は、路上駐車がなくならない背景に、運送業の「ジャストインタイム」と呼ばれる仕組みが関係している可能性があると指摘する。在庫コストを減らすため、荷主が必要とする量を決められた時間に届ける制度で、荷主にメリットがあるが、運送業者側は配達時間を厳密に指定されてしまう。
同協会事業部の飯島知徳次長は「ドライバーの心理として道路が混む可能性を考え、配達先近くに行っておきたいという気持ちがある。早く着いた時、近くに駐車する場所がないと路上に止めるのではないか。駐車スペースを設けるなどして荷主側に受け入れ態勢が整えば路上駐車は減るはず」と話す。
高梨運送(川崎市)の高梨信広社長も「配達が早く終わると次の配達先の予約時間まで待たないといけない。近くに大型トラックが入れる駐車場がなかったり、高速道路のサービスエリアが混んでいたりすると、路上に止めるしかないのでは」と推測する。「配達先で待てる駐車スペースを荷主に取ってもらうのが一番の対策」と言うが、そうした対応を取る荷主はほとんどいないという。
全日本トラック協会が設置する休憩施設「トラックステーション(TS)」は全国に26カ所あるが、利用者数の地域差などから閉鎖していくTSもある。橋本さんは「協会も荷主もみんなで考えていかないと、路上駐車するトラックだけが悪者になる」と強調する。