大阪府吹田市で2019年、交番勤務中の警察官が刺されて拳銃を奪われた事件で、強盗殺人未遂罪などに問われた無職
飯森
(いいもり)裕次郎被告(35)の裁判員裁判の判決が10日、地裁で言い渡される。精神障害がある飯森被告の刑事責任能力をどう判断するかが焦点だ。(林佳代子)
起訴状によると、飯森被告は19年6月、府警吹田署千里山交番の駐車場で、
古瀬鈴之佑
(こせすずのすけ)巡査長(28)の胸を包丁で刺し、実弾入りの拳銃を奪ったとされる。翌朝、箕面市の山中で逮捕された。
公判で検察側は、拳銃を奪った動機が不明であることなどを踏まえ、事件時に統合失調症の影響を著しく受けていたことを認める一方、事件後に服を着替えるなど合理的な行動も取ることができていたと指摘。限定的ながらも責任能力は問えるとした。
飯森被告は被告人質問で、襲ったのは「頭の中の知人」や「夢の中の精霊さん」から自分を攻撃する人に仕返しをするよう指示されたからだと説明。弁護側は、現実と妄想の区別がつかず、責任能力はなかったとした。
公判では、起訴前と起訴後にそれぞれ精神鑑定した鑑定医2人の証人尋問も行われた。いずれも十数回の面接を重ねており、急激な減薬によって幻聴や思考障害が悪化した状態だったとする点では同じ意見を述べたが、事件にどのような影響があったかについては異なる見解を示した。
鑑定医の1人は、虚偽内容の110番をして交番にいる警察官の数が減るようにしたほか、逃走中に服を着替えていたことなどを重視。「幻聴の指示だけでは臨機応変な対応はできず、犯行には被告の意思も含まれている」と指摘した。
もう1人は、合理的な行動だけでなく、山中に入った後に向かったコンビニで履歴書を購入するなど、つじつまの合わない動きもしていたとし、「自分の意思が発揮できず、幻聴により夢なのか現実なのかわからない状態だった可能性がある」と証言した。
刑法の規定では、責任能力が著しく低下していれば「心神耗弱」として刑が減軽され、完全に失われていれば「心神喪失」として罰せられない。
検察側は論告で、「住民に大きな不安と恐怖を与えた。完全責任能力があれば懲役25年を超える求刑をすべき事案だが、病気の影響を考慮した」として懲役13年を求刑。弁護側は最終弁論で、「病気のために行動をコントロールできない人に刑罰を与えても意味がなく、まずは治療が必要だ」として無罪を求めており、裁判員の判断が注目される。