乗客乗員520人が犠牲になった日航ジャンボ機墜落事故現場には毎年、東日本大震災の遺族も登っている。11日夕に群馬県上野村の神流(かんな)川で営まれた灯籠(とうろう)流しには、津波で長女薫さん(当時18歳)を亡くした宮城県亘理町の早坂満さん(59)と由里子さん(58)の姿があった。「震災を忘れてほしくない」と願う一方で、「語れるほどに心の傷は癒えない」。葛藤を抱える早坂夫妻を支えてきたのが、悲しみを分かち合う遺族同士の交流だ。
慰霊登山に初めて参加したのは3年前。墜落事故で次男健さん(当時9歳)を亡くした美谷島邦子さん(74)=東京都大田区=に誘われた。薫さんが通っていた自動車学校の避難対応を巡る訴訟で生じた遺族間のすれ違いについて相談したのがきっかけだった。
今年7月、日航機事故の犠牲者の家族らと「御巣鷹(おすたか)の尾根」へ通じる登山道を整備した。大工の満さんは古びた銘標を建て替え、由里子さんは美谷島さんと山を歩いてシャボン玉を飛ばした。「この場にいていいのだろうか」。本音を漏らした満さんに、参加者は言った。「悲しみの根っこは同じ」「娘さんがつないでくれた縁だよ」。その日の晩は宿で語らい、大泣きした。
11日、由里子さんが手にした灯籠には「薫へ、あなたの幸せを願います」とあった。もう会えない天国にいたとしても、子供には幸せであってほしい。初参加した2018年は犠牲になった自動車学校の教習生25人の名を貼ったが、今年は娘を亡くした一人の母親としての気持ちをつづった。
胸の底にある怒りや悲しみと正面から向き合うのはまだつらい。でも、耳を傾けて気持ちを包み込んでくれる人たちがいる。「少しずつ前に進みたい」。河原に並んだ明かりを見つめて、早坂夫妻は話した。【神内亜実】