窓を突き破る大量の泥、道路を塞ぐ流木や岩――。13、14日に大雨特別警報が出た広島市では、住宅地のすぐそばで土砂災害が発生し、複数の家屋に被害が出た。死傷者は確認されていないが、住民らは「あっという間の出来事だった」と恐怖を口にした。雨は17日以降に再び強まる恐れがあり、地域の不安は高まっている。爪痕が残る現場を記者が歩いた。
少し青空が出た15日午後、同市西区田方3の団地を訪れると、住民らは土砂を片付けながら「怖かったね」「大丈夫だった?」と声を掛け合っていた。降り続く雨で裏山の土砂が崩れ、住宅街を直撃。一帯には泥の臭いが立ちこめていた。住民らは災害時の様子を証言した。
「早く逃げて!」。団地に住む主婦の女性(45)は14日午後7時ごろ、ベランダで洗濯物を干していた時に、山手側のマンションから住民が叫ぶのを聞いた。外を見ると、土砂が道路を伝って流れてきた。「やばいな」。逃げるタイミングが分からずにいると、濁流は勢いを増していた。午後11時すぎ、警察に避難を促されて消防のマイクロバスに乗り、愛犬とともに避難所で一夜を明かした。
翌朝戻ると、団地近くの道路は約200メートルにわたって泥で埋まり、流木が押し寄せていた。「これ以上雨が降ったらどうなってしまうのか」。女性は不安げに話した。
1人住まいの久保井恵美子さん(82)は14日夜、心配になって電話した友人の80代女性から「足が土砂に埋まって出られない」と助けを求められた。土砂が窓を突き破り、なだれ込んできたという。久保井さんは町内会長の西谷良浩さん(80)に救助を要請、助け出された女性は病院に運ばれ、無事だった。
西谷さんによると、団地は1970年ごろにでき、約45世帯からなる。2014年の広島土砂災害を機に災害時の連絡網を見直した。西谷さんは今回、災害発生前に可能な範囲で団地を回ったり、住人に電話したりして避難を呼びかけたという。「今まで経験したことのない土砂崩れだったが、けが人がなかったのは不幸中の幸いだった」と振り返ったが、再び雨が強まることへの不安も口にした。
広島市安佐南区山本6の住宅街にも、激しい濁流が押し寄せた。西本猛夫さん(72)は14日、自宅で「ゴトン、ゴトン」という異音を耳にした。避難先から15日朝に帰宅すると、自宅そばの道路に直径1メートルほどの岩が転がっていたという。地区は14年の土砂災害でも甚大な被害を受けたが、西本さんは「今回の方が被害がひどい」という。高台から泥に覆われた自宅周辺を眺め、「自分が住む地域で起こっていることとは到底思えない」とぼうぜんとした様子で語った。【根本佳奈】