新型コロナウイルスの「第5波」で若年層に感染が広がっていることを受け、大阪府は18日の対策本部会議で、2学期からの学校での感染対策を決定した。原則として修学旅行は延期し、部活動では感染リスクの高い活動の自粛を求める。10歳代以下の感染者が急増する一方、重症者の半数を40~50歳代が占めており、親世代への感染拡大を防ぐ狙いがある。
府が示した対策は▽9月1日以降の修学旅行の原則延期▽部活動での感染リスクの高い活動の自粛▽合宿や他校との練習試合は行わない――など。
吉村洋文知事は、これまで会社や飲食店で感染した親世代から家庭内で子どもにうつるケースが目立ったのに対し、現在は学校で感染した子どもが家庭に持ち込む「逆流現象」の危険性が高まっていると指摘。「(インド由来の変異ウイルス)『デルタ株』が広がるなかで学校活動が始まる。子どもが家庭に持ち帰ると親世代で感染が広がる契機になりうる」と、対策強化の理由を説明した。
授業については、これまで通り、分散登校や短縮授業は求めない。しかし学校再開後に感染がまだ拡大している恐れがあり、吉村知事は「休校についても当然視野に入れなければならない」と言及。対面授業が難しくなった場合に備え、各校でオンライン学習の準備に取り組むことも求めた。
6月21日以降の第5波では、感染者に占める10歳代以下の割合が18%で、今春の「第4波」から6ポイント増加している。1日あたりの感染者が2296人と過去最多となった18日は、20%超だった。
府によると、学校に関連するクラスター(感染集団)も増加傾向だ。第5波のクラスター(95件、16日時点)のうち、大学・学校関連の占める割合が19%、児童施設関連が13%と、第4波に比べてそれぞれ11ポイント、9ポイント増加した。
大学・学校関連ではバスケットボールやバレーボール、ラグビーといった部活の場や、その後の食事会が大多数で、児童施設関連では保育所や学童保育のクラスターが確認されている。
第5波で10歳代以下が重症病床に入院したケースは2人だけだが、重症者の多くは児童・生徒の親世代だ。40~50歳代の占める割合が53・1%と第4波の倍近くになり、60歳代以上(37%)よりも高い。判明している感染経路のうち、家族内感染は15・7%と、濃厚接触者(家庭内を除く)の17・6%に次いで割合が高い。
大阪府内の公立小中学校や高校では23日以降、新学期が始まる。授業や部活動など集団での行動は避けられず、学校関係者の緊張感は高まっている。
「2学期に向け、基本的な感染症対策を再度、徹底したい」。橋本正司・府教育長はこの日の対策本部会議で、換気や手洗いなどの重要性を強調。感染がさらに拡大して臨時休校する場合に備えて、オンライン学習の準備を進めるとした。
しかし、4~5月に小中学校で家庭と結んでオンライン学習を実施した際にトラブルが頻発した大阪市では、通信環境の改善に向けたシステムの切り替えが始まるのは10月の予定だ。ある市立小の校長は「休校になれば授業の遅れは避けられない」と懸念する。
参加者がPCR検査を受けた場合などに実施を認めていた修学旅行は、原則として延期するよう求めた。
大阪市内のある府立高は感染の収束が見通せないとして、10月に予定している沖縄への修学旅行の延期を検討する。昨年度は中止しており、校長は「何としても実施したいが、大丈夫だろうか」と気をもむ。
部活動での感染が多いとして、練習試合や合宿は禁止に。同市立中の校長は「全国大会への参加が認められただけでもよかった。できる限りの対策をして臨みたい」と気を引き締めた。