「増床でも9月上旬満床」 静岡県、医療崩壊危機

静岡県内での新型コロナウイルスの爆発的感染拡大は「医療崩壊」が近く現実になり得るところまで高まってきた。新規感染者は連日の過去最多更新で500人台となり、既に3千人近い全療養者がさらに増え続けるなか県は18日、このままでは対応病床が「9月上旬に満床になる」との厳しい試算を発表。危機的状況に、回避のための医療確保策や、20日からの緊急事態宣言による一部業種への休業や入場制限の要請を決定した。救える命が救えなくなる事態の回避へ、感染につながる「人との接触」を防ぐあらゆる対応が急務となっている。
県は18日の感染症対策本部員会議で、新型コロナウイルス患者対応病床の増床予定を達成しても、入院患者が現在のペースで増え続けると9月上旬には確保病床数を超えるとの試算を明らかにした。そして医療提供態勢が崩壊寸前の危機的状況との認識のもと、回避策をまとめた。
川勝平太知事は新型コロナの対応病床が543床だった10日、県内の全病院に対し、法律に基づく病床確保協力要請を実施。その結果、92床を段階的に確保するめどが立った。これにより今月下旬に594床、9月初旬に624床、同中旬ごろには635床まで、確保できる見通しとなった。
ところが入院患者の増加ペースが速く、18日正午時点で病床使用率は56・1%(うち重症用33・3%、県東部53・6%、中部66・1%、西部49・5%)となっているが26日に85%超に達し、9月2日頃には満床になる計算だという。ペースがさらに速まれば、より早期に入院が不可能になる。
この18日の新規感染確認は590人。4日時点では25・4人だった直近1週間の人口10万人当たり新規感染者数は74・6人で、前週比1・84倍に達した。
川勝知事は「あらゆる施策を通じて感染者数を減少に転じさせ、医療提供態勢を守らなければならない」と述べ、「このままでは救える命も救えなくなる事態に直面することになる」とも言及。対策を指示した。
対策は具体的には、症状が改善傾向となった入院患者をこれまでより早く宿泊療養施設や自宅での療養に切り替えたり、臨時的な対応病床を確保したりする。
軽症者は入院せずとも適切な医療を受けられるよう、宿泊療養や自宅療養の対応も強化。宿泊療養施設では、重症化抑制効果が期待される点滴治療「抗体カクテル療法」や酸素投与も実施できる態勢を整える。自宅療養者は近くの診療所などで受診できる仕組みなどを構築する。
現状では中等症患者は入院できているが、県は今後は「軽症者はホテルで療養、入院は中等症以上に集約」としており、入院基準厳格化は避けられない。
こうした状況を踏まえ、県健康福祉部の後藤幹生参事は「今月中は極力、一歩も家を出ず、家族以外との面会を減らしてほしい。自分の命を自分で守る段階になっており、外出は冒険。生命の危機に陥る懸念があると理解してほしい」と〝セルフロックダウン〟実践を求めた。

【医療危機の見通し】対応病床は「635床」確保にメド。それでも現在の入院患者増加ペースでは「9月上旬には満床」と試算
【対策】
◆臨時病床設置=満床で「新規患者受け入れ不可能」となった時、臨時対応する病床の設置を検討。人員は県が確保
◆宿泊療養施設強化=臨時医療施設を設置、酸素投与や「抗体カクテル療法」を実施へ。増室に県有施設利用も
◆自宅療養強化=診療所の医師らが診察する態勢を構築
◆クラスター抑制=早期発見のため高齢者・障害者・児童向けの各福祉施設や幼稚園、学校に検査キットを配布