群馬県が20~30代に「2回接種で車」特典 ワクチン不安を考慮

若年層の県民に新型コロナウイルスワクチンを接種してもらおうと、群馬県は9月末までに2回の接種を終えた20~30代に抽選で乗用車や旅行券をプレゼントする施策を打ち出した。若年層の未接種者をできるだけ少なくするための苦肉の策だ。しかし、この世代にはワクチンに対する特有の忌避感があり、背景にはそうした点への考慮があるという。
「批判があることは覚悟していたが、特定の世代にワクチン未接種の『穴』ができるのは避けたかった」。県担当者はそう打ち明ける。山本一太知事が特典の付与を明らかにした6日以降、県には「なぜ、20~30代だけなのか」「モノで釣ろうとしている」といった否定的な意見が県民から相次いで寄せられた。
だが、英医学誌ランセットに昨年、英ロンドン大などのチームによるこんな調査結果が掲載された。チームが2015~19年、世界149カ国・地域の18歳以上にワクチンの安全性、有効性などに関する信頼度を尋ねたところ、日本は安全性で15年が147位、19年が最下位となり、有効性も15年が147位、19年が148位となったのだ。
チームは「日本はワクチンの信頼度が世界で最も低い国の一つにランクされる。これはHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの安全性への不安に関連している可能性がある」などと分析した。
子宮頸(けい)がんなどを防ぐHPVワクチンを巡っては、接種後の体調不良に関する報道が行われたことなどから、厚生労働省が13年に積極的勧奨を中止し、結果的に接種率は0・6%に落ち込んだ。当時の定期接種対象世代(小学6年~高校1年相当の女子)がちょうど20代に当たる。県担当者は「この世代が特にワクチンに対する不安が根強いのではないかと考えた」と説明する。
この世代がスマートフォンを頻繁に使う点も、特典付与に乗り出したもう一つの理由だ。スマホでは幅広い分野のニュースを目にしづらいため、ワクチンに関する情報にアクセスする機会が少ないのではないか、と考えたという。県担当者は「自動車などで関心を持ってもらい、少しでも新型コロナワクチンの情報に目を留めてもらいたい」と話している。【庄司哲也】