入院待ち中等症患者「命の綱」 オンライン診療で自宅療養支援

自宅で療養する新型コロナウイルス感染症の患者が急増する中、オンライン診療で患者を支援する動きがある。医療にアクセスできない軽症者への薬の処方を効率よくできる一方で、病床が逼迫(ひっぱく)している地域では、酸素投与が必要だが入院できない「中等症Ⅱ」の患者を一時的に支えている。
8月中旬、医療法人社団「平郁会」の大田和枝理事長のもとに、救急車からオンライン診療の依頼が入った。平郁会は、東京都世田谷区から自宅で療養する新型コロナ患者のオンライン診療の委託を受けている。依頼のあった患者は50代男性で、基礎疾患はない。男性は軽症のため自宅療養していたが、容体が悪くなり救急車を呼んだ。救急隊到着時の酸素飽和度は84%。入院が必要な中等症Ⅱの基準(93%)を下回っていた。
救急車1台当たりの酸素ボンベの搭載量は限られているため、計3台の救急車を乗り継いで酸素を吸入。その間も搬送先は見つからず、酸素投与を止めることもできない。そこで、大田さんのもとに依頼が来た。大田さんはオンラインで診察して自宅でも酸素を投与できるように、酸素濃縮器を男性宅に手配。男性は自宅に戻り、酸素飽和度が一時的に回復した。2日後に再び容体が悪くなり、その日に入院できたという。
平郁会によると、7月上旬までは軽症患者の依頼が大半だったが、8月中旬には、酸素投与が必要な中等症Ⅱの患者が全体の3分の1近くを占めるようになった。病床が逼迫して入院まで2~3日かかるようになったため、救急車を呼んでも病院まで搬送されず、自宅に帰された人も多い。オンライン診療で酸素や薬の投与につなげて入院までの隙間(すきま)を埋めている。大田さんは「酸素投与は苦しさをなくすための対症療法で、本来は入院すべきだ。非常につらい状況で、あるべき姿ではない」と訴えた。
オンライン診療は病院に行けない軽症者にとっても大きな支えだ。世田谷区の40代女性は、夫と幼い子ども3人の家族5人全員が10日に新型コロナ陽性になった。軽症だったが、発症から5日間、女性は起き上がれないほどの全身の倦怠(けんたい)感があった。19日には顔の痛みや鼻水の症状があり、平郁会のオンライン診療を受診。その日のうちに抗生剤が自宅に届いた。基礎疾患のある夫は高熱や嘔吐(おうと)、小学生の子どもはせきに苦しみ、それぞれオンライン診療で症状に合った薬を処方された。女性は「症状が続いて不安になるときもあったが、つらいときに薬をもらえて安心した」と話した。
国も自宅療養者のオンライン診療のてこ入れをしている。厚生労働省は16日から、自宅療養者のオンライン診療への報酬を上乗せして後押しする。初診はこれまでの2140円から4640円と約2倍、再診は730円から3230円と約4倍だ。
医師会全体でオンライン診療に取り組む動きもある。東京都医師会は都内全域の自宅療養中の患者に対してオンライン診療をする体制の整備を進めている。複数の患者が入ることができる待機室をオンライン上につくり、医師と患者が直接つながれる仕組みを予定している。先駆けて同様のシステムを導入した品川区医師会の三浦和裕理事は「診療可能な医師を探す保健所の業務が減り、医師も往診に行く時間が省けて隙間時間で診療できる」と話す。【中川友希】