コロナ禍でコメ余りに拍車 山形の生産者「豊作喜べない」

新型コロナウイルス禍はコメ余りに拍車をかけ、山形県内有数の生産地・庄内地方の生産者らに暗い影を落としている。外食需要減で業務用米などの消費が鈍化し続け、同地方の倉庫には、在庫米が積み上ったままだ。収穫の秋を前に、農家らは「先行きが見通せず、豊作が喜べない」と、米価下落に警戒感を強めている。【長南里香】
庄内地方のある農協の倉庫に、約1トン詰めの大容量コメ袋「フレコン」が、ずらりと並んでいる。「過去最大規模。こんな光景、誰も見たことない」。年間生産量の1割超を占める約1万俵(約600トン)の在庫を前に、農協幹部は深いため息をついた。
9月上旬にも始まる稲刈り後、倉庫には続々と新米が入荷する予定だが、コロナ禍で行き先が決まらない2020年産米の保管が続く。新米の保管スペースの確保には、民間の貸倉庫などへの移動が避けられず、今後は賃貸料などの経費が重くのしかかってくる。
農林水産省などによると、今年6月末までの全国の主食用米の民間在庫量は、適正基準の180万トンを大きく上回る219万トン(速報値)。飼料用米などへの転換対策を強化し、全国で山形県生産量約34万トンを上回る作付けに相当する、6万5000ヘクタールの転作が進んだ結果、米価急落の懸念は後退した、という観測を示す。
これに対し、生産現場には懐疑的な声がくすぶる。鶴岡市の農業を営む男性(45)は「国の見通しは甘い」などと、警戒感を強める。豊作になれば、余剰在庫が積み増していき、来年度以降の在庫がさらに膨らむ悪循環に陥るのではないかと懸念する。
20年の概算金が1万2200円だった主力の業務用米(1等米60キロ)について、男性は「1万円を切ったら利益が薄く、暮らしていけない」と訴え、離農者が増えていくと心配を募らせている。