紀伊半島豪雨から10年がたち、和歌山県新宮市で4日夜、犠牲者の供養のため774発の花火が打ち上げられた。新型コロナウイルス感染防止のため人は集めず、地元住民たちは思い思いの場所で静かに空を見上げた。
6人が犠牲になり、住宅226棟が全半壊した同市熊野川町の水田で、午後8時から花火が打ち上がった。赤や黄、緑色に夜空を染めた後、「献花」をイメージした白一色で締めくくった。地元の有志が企画し、被災した和歌山、奈良、三重の3県から協賛金を集めて実現させた。
発起人の一人で、同町のガス店経営、池上順一さん(69)は、当時2階まで水没したという自宅近くで見届けた。「この10年間はみんな復興に一生懸命だったが、心に残る形で供養がしたいとずっと思ってきた。私たちは、これからも台風や水害と付き合っていかなければならない。あの時のことを忘れないよう花火を打ち上げ続けたい」と語った。
また、死者・行方不明者11人を出した奈良県五條市大塔町宇井では4日、市主催の追悼式があった。遺族や関係者ら約80人が慰霊碑の前で献花し、手を合わせた。母親を亡くし、父親が今も行方不明の中村彰作さん(56)は「あっという間の10年だった。ほほえむ両親の姿をよく夢に見る。父が早く見つかるよう、そして水害の記憶が風化しないよう願っている」と話した。【木村綾、高田房二郎】