39・8度の自宅療養男性、保健所「入院必要なし」…観察なき死亡に県「ミス重なった」

新型コロナウイルスに感染して自宅療養中だった50歳代の男性が、埼玉県春日部保健所による健康観察が一度も行われないまま死亡した問題で、大野知事は7日の定例記者会見で、死亡した男性について「本来であれば医師が、入院が必要と判断すべき状態だった」と明らかにした。
知事はさらに、県春日部保健所で業務の

逼迫
(ひっぱく)により、感染者の健康状態などを記載した書類を作成していなかったことや、保健所内でのチェックが機能しなかったことを挙げ、「三重にミスが重なった」と説明。書類での情報のやり取りをやめてデジタル化し、職員間で共有するといった、チェック体制の再構築を指示したことも明らかにした。
県によると、男性は8月17日に県春日部保健所管内の医療機関で陽性と判定されたが、住民票がさいたま市にあったため、さいたま市保健所に担当が移され、健康調査が行われた。
さいたま市によると、陽性と判定した医療機関からの「発生届」には、血中酸素濃度や、医師による症状の軽重の判断が記入されていなかった。男性は18日の時点で39・8度の発熱があり、「歩くと息切れがする」と訴えていたが、同市保健所は男性とのやりとりから「直ちに入院調整が必要ではない」と判断したという。
その後、男性は、実際に住んでいた地域を管轄する県春日部保健所に再び担当が移され、20日から自宅療養中の健康状態を観察することになったが、9月3日に死亡して発見されるまで、健康観察は行われなかった。同保健所では、感染者の体温や血中酸素濃度といった情報を紙に印刷し、それをもとに「カルテ」の形で書類にすることになっていたが、感染者の急増による多忙でカルテが作成されず、健康観察が行われなかったという。
県幹部は「感染者情報のやり取りも各保健所間で統一されていなかった。各保健所の内部では小さなミスも多発している。デジタル化、共通化を図り、情報の共有と相互チェックを進め、ミスの再発を防ぎたい」としている。