静岡県富士宮市議会の議長選を巡り、同僚市議に自身に投票する見返りに現金を渡そうとしたとして、市議会議長の遠藤英明容疑者(79)(富士宮市小泉)が贈賄(申し込み)容疑で逮捕された事件で、遠藤容疑者が周囲に「(議員生活の)最後に議長になりたい」と頻繁に話していたことがわかった。県警は議長職に強く固執していたとみて、全容解明を進める。
遠藤容疑者は2019年10月の議長選で当選するため、投票前日に同僚市議に対し、富士宮市内で封筒入りの現金100万円を渡そうとした疑いが持たれている。この市議は別会派に所属しており、翌日に現金を返却したという。
複数の関係者によると、現在4期目の遠藤容疑者は数年前から周囲に対し、「議長になりたい」という趣旨の話を繰り返していた。もともと3期で引退する意向だったが、支持者らの後押しを受け、19年4月の市議選に立候補した。「議長になってほしい」との声があり、本人も意欲を持っていたという。
今回の容疑が浮上した19年の議長選では、遠藤容疑者は他の市議に5票差で敗れており、今年5月の議長選で念願の当選を果たした。
県警は8日、富士宮市議会に捜索に入ったほか、遠藤容疑者を静岡地検に送検した。今後、容疑の裏付けを進めるとともに、他の市議への利益供与や今年5月の議長選での不正の有無についても調べを進める。
現職議長の逮捕を受け、同市議会の小松快造副議長は8日、記者会見した。遠藤容疑者について、「最後の花道を(議長として)飾りたいという気持ちを感じることはあった」と述べた。