政府は9月8日、宮城、岡山を除く19都道府県で緊急事態宣言の期限を9月12日から30日まで延長する方針を固めた。 次々と出現する感染力の強い変異株、日々伝えられる医療現場の逼迫、自宅療養中の死亡――日本医師会は「長期戦を覚悟」との見解を発表した。 にもかかわらず、麻生太郎副総理兼財務相は9月7日、前日の東京都の新規感染者数が1000人を下回ったことに触れつつ、新型コロナウイルスの感染拡大は「まがりなりにも収束」したと語った。4度目の緊急事態宣言が発令された7月12日の東京都の新規感染者数は502人である。わずか2カ月前のことを忘れてしまったのか。現政権がいったい何を基準に判断しているのか、不明だ。 ■ロックダウンの是非をめぐる議論 東京都の新規感染者数が初めて1000人を超えたのは、昨年の大みそか。1月7日には2000人を超え、2度目の緊急事態宣言が発令された。 現在はワクチン接種が進むなど1年前とは状況は違う。しかし、根拠不明のまま「収束」などと口にしながら冬を迎えたとき、昨年と同じくウイルスが一層の猛威を振るう可能性は否定できない。 そうした場合、巻き起こると予想されるのが、ロックダウン(都市封鎖)の是非をめぐる議論だ。 先に結論を言うなら、私はロックダウンの実施に反対ではない。ただし、十分な補償とセットであることが絶対の条件である。 ロックダウンとは個人の外出禁止や店舗などの営業禁止、交通機関の停止といった強制力を伴う措置。アメリカや英国、ニュージーランドなどで実施され、一定の効果を上げたケースもある。日本では感染拡大に歯止めがかからない状況に業を煮やした全国知事会が8月、「ロックダウンのような手法」の検討を国に重ねて要求した。 たしかに感染拡大を食い止める手段として、ロックダウンは有効なカードになるのかもしれない。しかし、それには大きな“副作用”が伴う。経済活動が止まることだ。 ■「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた当初は、「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」といった声が、メディアなどでもたびたび取り上げられた。しかし、次第に耳にする機会が減っていった。話題は東京オリンピック・パラリンピックや、ワクチン接種、自民党総裁選の行方にとって代わられ、「自粛や制限は、補償とセットで」といった訴えはかき消されがちだ。 しかし“経済による死”のリスクは現在のほうが格段に高まっている。このままロックダウンだけを強行すれば、経済に殺される人たちは間違いなく増える。ネットカフェが閉鎖されれば、大勢の人たちが路上に追い出されることにもなるだろう。
政府は9月8日、宮城、岡山を除く19都道府県で緊急事態宣言の期限を9月12日から30日まで延長する方針を固めた。
次々と出現する感染力の強い変異株、日々伝えられる医療現場の逼迫、自宅療養中の死亡――日本医師会は「長期戦を覚悟」との見解を発表した。
にもかかわらず、麻生太郎副総理兼財務相は9月7日、前日の東京都の新規感染者数が1000人を下回ったことに触れつつ、新型コロナウイルスの感染拡大は「まがりなりにも収束」したと語った。4度目の緊急事態宣言が発令された7月12日の東京都の新規感染者数は502人である。わずか2カ月前のことを忘れてしまったのか。現政権がいったい何を基準に判断しているのか、不明だ。
■ロックダウンの是非をめぐる議論
東京都の新規感染者数が初めて1000人を超えたのは、昨年の大みそか。1月7日には2000人を超え、2度目の緊急事態宣言が発令された。
現在はワクチン接種が進むなど1年前とは状況は違う。しかし、根拠不明のまま「収束」などと口にしながら冬を迎えたとき、昨年と同じくウイルスが一層の猛威を振るう可能性は否定できない。
そうした場合、巻き起こると予想されるのが、ロックダウン(都市封鎖)の是非をめぐる議論だ。
先に結論を言うなら、私はロックダウンの実施に反対ではない。ただし、十分な補償とセットであることが絶対の条件である。
ロックダウンとは個人の外出禁止や店舗などの営業禁止、交通機関の停止といった強制力を伴う措置。アメリカや英国、ニュージーランドなどで実施され、一定の効果を上げたケースもある。日本では感染拡大に歯止めがかからない状況に業を煮やした全国知事会が8月、「ロックダウンのような手法」の検討を国に重ねて要求した。
たしかに感染拡大を食い止める手段として、ロックダウンは有効なカードになるのかもしれない。しかし、それには大きな“副作用”が伴う。経済活動が止まることだ。
■「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」
新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた当初は、「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」といった声が、メディアなどでもたびたび取り上げられた。しかし、次第に耳にする機会が減っていった。話題は東京オリンピック・パラリンピックや、ワクチン接種、自民党総裁選の行方にとって代わられ、「自粛や制限は、補償とセットで」といった訴えはかき消されがちだ。
しかし“経済による死”のリスクは現在のほうが格段に高まっている。このままロックダウンだけを強行すれば、経済に殺される人たちは間違いなく増える。ネットカフェが閉鎖されれば、大勢の人たちが路上に追い出されることにもなるだろう。